2014 Fiscal Year Annual Research Report
インターネット掲示板における投資家心理と投資家ネットワークからみるIPO
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26885065
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
月岡 靖智 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 特任講師 (50736709)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 新規株式公開 / 投資家心理 / インターネット掲示板 / テキストマイニング / サポートベクターマシーン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、インターネット掲示板の投資家心理および投資家間ネットワークが新規株式公開 (IPO) における高い初期収益率と上場後の低い株式投資収益率というIPOパズルに与える影響を検証することである。 26年度は、まず、インターネット株式掲示板における投資家心理とIPOパズルの関係について主に検証を行った。投資家心理は、Yahoo! Japan ファイナンス株式掲示板の書き込みからテキストマイニングおよびSVMを用いることで測定した。2001年から2010年までの日本におけるIPO企業を対象に検証した結果、IPO前の投資家の注目度が高く、投資家心理が強気であるほど初期収益率が高いことを発見した。加えて、IPO前の投資家の注目度が高いほど上場後の株式投資収益率が低下することを発見した。この結果は、国内学会および国際学会で報告しており、ワーキングペーパーとして公表している。現在は海外ジャーナルに投稿予定である。 次に、インターネット株式掲示板における投資家心理とIPO後の株式売買の関係を検証した。検証の結果、投資家の注目度が高く、投資家心理が強気であるほど、上場直後の株式売買が活発であることを発見した。さらに、投資家心理のばらつきが大きいほど、上場直後の株式売買が活発であった。ただし、投資家心理が強気に傾いている場合、投資家心理のばらつきが大きいほど上場後の株式売買が活発であるとする関係は、投資家心理が弱気に傾いている場合に比べて緩やかであった。この結果をまとめた論文は、国内ジャーナルに掲載予定である。 最後に、インターネット掲示板における投資家間ネットワークとIPOパズルの関係については現在データの整備、ネットワーク指標の精緻化を行っている。投資家間ネットワークとIPOパズルに関する研究は27年度の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、インターネット株式掲示板の書き込みから投資家心理を測定し、投資家心理が新規株式公開 (IPO) における高い初期収益率と上場後の株式投資収益率の低下というIPOパズルおよび上場直後の株式売買に与える影響を検証した。投資家心理とIPOパズルの関係を検証した論文は、学会報告を行うとともにワーキングペーパーとして公表している。投資家心理と上場後の株式売買に関する論文は国内ジャーナルに掲載予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、投資家心理とIPOパズルの関係を検証した論文を海外ジャーナルに投稿するとともに、掲載を目指す。同時に、投資家間ネットワークとIPOパズルの関係を検証する。投資家間ネットワークは、すでに取得しているYahoo! Japan ファイナンス株式掲示板の書き込みデータに含まれているユーザーIDと書き込み間の返信をもとに、グラフ理論 (ネットワーク分析) を用いて測定を行う。投資家間ネットワークの指標は、投資家間の情報の非対称性の代理変数と考え、検証を進める。ネットワーク指標としては、密度およびグラフ中心性を用いる。たとえば、密度が高いということは投資家同士がつながっている (投資家間の議論が活発である) ことを示す。つまり、掲示板において議論がなされていると考えられ、投資家間の情報の非対称性は緩和されていると考えられる。ネットワーク指標によって測定された投資家間の情報の非対称性の程度が、IPOパズル、上場後の株式売買およびボラティリティに与える影響を明らかにする。
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