2015 Fiscal Year Annual Research Report
脱北女性の「脱北過程経験」と韓国社会への適応に関する社会学的考察
Project/Area Number |
26885069
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
尹 珍喜 同志社大学, 社会学部, 准教授 (60732253)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 脱北女性 / 脱北過程 / 韓国社会への適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、脱北女性の複雑な家族関係を背景とする「脱北過程経験」が彼女らの韓国社会への適応にどのような影響を与えているかを、当事者への対面聞き取り調査を通じて明らかにすることにある。 今年度は、書籍・文献・資料の収集とまとめ、インタビュー・データの整理と分析、学会・研究会への参加及び発表を行った。データの分析は、①北朝鮮出国前、②北朝鮮出国後の中国において、③韓国入国後、の3つのフェイズにおける脱北女性の家族形成に注目した結果、以下のような結論に導かれた。 第一に、脱北女性における家族構成の複雑性が確認できた。つまり、脱北女性の多くは、北朝鮮に家族を残したまま脱北を決行し、中国では売買婚を生存の手段として選択していた。このような複数の家族形成の経験は、韓国入国後、家族をめぐる様々な葛藤をもたらしていたのである。 第二に、脱北女性における結婚の戦略性が見られた。つまり、彼女らは経済的安定や韓国社会への定着を求めて、韓国男性との結婚を手段として用いていたのである。一方、経済的安定よりも心理的安定を求めて脱北者同士の結婚を望む傾向が近年の若い脱北女性を中心に表れていた。その背景には、結婚への危機感を意識し始めた脱北男性が従来の家父長的な態度を改めるように変化したこともあげられる。 以上のように、脱北女性の「脱北過程経験」と家族形成の特徴を理解することが、彼女たちの韓国社会への適応に重要な手がかりになっていることが確認できた。今後、より詳細な分析を通じて、既存の韓国社会における脱北女性への断片的な支援を克服し、より状況即応的かつ総合的な支援確立の途を構想していく予定である。
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Research Progress Status |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(2 results)