2014 Fiscal Year Annual Research Report
保健室の誕生と機能の変容-学校看護婦による治療・予防から養護訓導によるケアへ-
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26885076
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
竹下 智美 淑徳大学, 総合福祉学部, 講師 (90735193)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 保健室 / 学校衛生 / 養護訓導 / 衛生室 / 施設・設備品 |
Outline of Annual Research Achievements |
1890年代に登場した「静養室」「休養室」について、筑波大学大学院体育研究科旧野村蔵書、国立国会図書館、筑波大学附属体芸図書館、旧開智学校教育資料室所蔵および、県立図書館および都道府県立公文書館の史料を収集し、「静養室」、「休養室」がどのようなプロセスで登場し、そこには、何が設置され、誰によってどのように利用されていたのかを当時の学校における疾病構造とともに明らかにした。 また、同時期に存在した「トラコーマ治療室」、1920年代初頭に設置された「学校診療所」については、学校看護婦や一般教員によって行われたキュア(治療)の実践内容とともにそれら施設の図面や写真、設備品の現物、設備品目録等の「モノ」の史料の分析を行った。 その研究成果の一部は、大空社より瀧澤利行・七木田文彦・竹下智美著雑誌「養護」の時代と世界ー学校の中で学校看護婦はどう生きたかー」を2015年3月23日に発刊した。同書の第4章 第2節「学校診療所の展開と衛生室の誕生」pp.124-134の中で、「東京市における学校衛生施設・設備の発達」について、それらが、どのようなプロセスで登場し、そこには、何が設置され、誰によってどのように利用されていたのかを当時、学校衛生施設・設備を先駆的に行っていた麹町区の学校医岡田道一の学校衛生施設の思想とともに明らかにした。また、「東京都牛込地区の学校衛生室」の基準とその設置例をもとに大正期から昭和初期にかけての学校衛生施設の実態を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筑波大学大学院体育研究科旧野村蔵書、国立国会図書館、筑波大学附属体芸図書館、旧開智学校教育資料室所蔵および、県立図書館および都道府県立公文書館における学校衛生施設・設備(「静養室」「トラコーマ治療室」「医務室」「休養室」「衛生室」)に関する史料を収集およびその読解も順調に進んでいる。それらの読解を進める中で、1890年代から1920年代における学校衛生施設・設備の実態と大まかな展開の様子は明らかになりつつある。 その研究成果の発表についても、学会での発表の機会は逃したものの、大空社より瀧澤利行・七木田文彦・竹下智美著雑誌「養護」の時代と世界ー学校の中で学校看護婦はどう生きたかー」を2015年3月23日に刊行し、同書の第4章 第2節「学校診療所の展開と衛生室の誕生」pp.124-134の中でその一部を公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記【現在までの達成度】欄にも記載した当初研究目的(課題)について、以下のように調査研究を推進する。第一に「静養室」「休養室」から「衛生室」への発展過程を検討するために、以下に代表される学校の実践記録と設置された「モノ」から「衛生室」の機能を明らかにする。とりわけ、当時学校衛生に力を入れていた醤油産業(キッコーマン醤油)で栄えた野田中央小学校に重点をおき篤志家の学校衛生への援助とその発展に焦点をあてながら分析を行う。また、「静養室」から「衛生室」への展開は、「医務室」、「治療室」「学校診療所」を経て行われるが、その中でも、制度化され展開がなされる「医務室」について、学校衛生行政史料をはじめ、文部省学校衛生官によって執筆された史料を分析する。文部省学校衛生官史料としては、岡田道一関係史料、大西永次郎蔵書、吉田章信蔵書、重田定正関係史料、新井英夫関係史料、塚田治作関係史料、荷見秋次郎関係史料等を中心にして、収集・読解・分析を行う。 その上で、①大正期に、様々な機能をもち展開される「医務室」「治療室」「学校診療所」「学校健康相談所」といった学校衛生施設・設備の詳細を明らかにし、②それらが学校医、学校看護婦、一般教員、保護者といった学校衛生に関わる人々の学校衛生実践とのせめぎ合いの中で、「衛生室」として統合され、展開していく過程を明らかにする。 研究成果は、11月に金沢で開催される第61回日本学校保健学会において研究発表を行う。②については、本年度、新たに収集する史料の読解により、平成28年度末には、「昭和初期における「衛生室」の形成過程と学校衛生実践-再びケアへ-」と題する論文を日本学校保健学会誌「学校保健研究」に投稿する。
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