2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26885078
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
河内山 拓磨 亜細亜大学, 経営学部, 講師 (70733301)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 会計学 / 会社法 / 比較法 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度にあたる平成26年度においては、研究に必要な設備備品の購入など研究環境を整備するとともに、以下の研究を実施した。 第1に、関連文献のレビューおよび比較検討である。諸外国における国際会計基準の導入と各国会社法の分配規制上の対応との関係性を明らかにするため、政府公表資料、大手会計監査事務所公表資料および関連先行研究を収集し、各国の会計制度・法制度についての理解および知識を深めた。また、収集した文献資料をもとに比較検討を行った結果、債権者保護という会社法の目的を維持するべく、諸外国はそれぞれ異なる分配規制上の対応を行ってきたことが確認された。とりわけ、すでに国際会計基準を個別財務諸表にまで適用しているイギリスやオーストラリアでは、公認会計士協会による実務ガイダンスの拡充や支払不能基準への移行といった制度的対応がなされていることが明らかにされた。 第2に、わが国分配規制に関する論文の執筆および投稿である。かねてより進めてきた平成13年商法改正の経済的影響に関する分析について、これを論文として執筆し国内学術雑誌への投稿および掲載を行った。諸外国における現況とならんで、わが国において分配規制がどのような変遷を辿ってきたか、また、その結果としてどのような影響が生じてきたかを明らかにしたことは今後の分配規制のあるべき姿を検討するうえで有意義であると考えられる。 第3に、法制度による分配規制にくわえ、補完的論点として、近年これに代わる他の債権者保護方策の1つとして注目されている財務制限条項について検討を行った。とくに、財務制限条項の実態および役割について分析を実施した。また、当該分析については英語論文を執筆し、国内外の学会および研究会において研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、国際会計基準をすでに広く導入している諸外国に注目し、各国分配規制における変化とその帰結について調査・分析することにある。とりわけ、本研究では、国際会計基準をすでに導入している諸外国を日本にとっての先行例として位置づけ、国際会計基準の導入に際して各国分配規制がどのように変容したか、また、その後の帰結は何であったかについて文献資料を中心に明らかにする。 上記の研究目的を達成するにあたり、すでに関連する文献資料の収集作業は概ね終えており、現在は比較検討を進めている段階にある。具体的には、イングランド・ウェールズ勅許会計士協会が公表している分配規制に関する実務ガイダンスやオーストラリア会社法の改正に関する文献をはじめとして広く文献資料を収集することができた。この結果、会計基準の変更、とりわけ公正価値測定の導入・拡大が分配規制上の論点となり、企業の分配行動をめぐる周辺制度を複雑化させている可能性があることが明らかとなった。 また、研究を進めていくうえで明らかとなった債務契約による債権者保護の可能性についても、これを補完的論点として位置づけ検討を進めている。こうした意味において、研究活動はおおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度である平成27年度は、交付申請書に記載した研究実施計画に従い、諸外国における分配規制の変化とその帰結について継続して分析を進めていく。ただし、分析が進展しているとはいえ、社会への発信という点で進捗がやや遅れていることから、学術雑誌への投稿が可能な状態となるよう研究を優先して進め、当該論文の執筆を中心課題と位置付けるものとする。これにくわえ、分析フレームワークの明確化および比較分析の精緻化を図るべく積極的に研究報告の機会を設け、定期的に研究の見直しが図れるようにする。
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