2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26885082
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
河野 敏鑑 専修大学, 公私立大学の部局等, 講師 (60733813)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 社会保障 / 健康と企業経営 / 格差と健康 / 医療経済学 / 産業保健 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、職域における所得格差と健康水準との関係について、健康保険組合のデータを用いた実証分析を行うことである。本研究ではとくに、(A)健康保険組合パネルデータを用いた企業グループ内における所得格差の変化および所得格差と健康状態に関する実証分析および(B)リーマンショックおよび東日本大震災が企業グループ内の所得分布や健康状態に与えた影響に関する分析の2つを柱に進めていく。 平成26年度は、主として(A)の研究を進めるため、データの収集およびパネルデータの構築を行った上で、データ分析を行った。また、応募書類を作成した段階では予定していなかったが、職場で働くことが所得を得ることとは別に社会関係資本を生み、非金銭的報酬を得て、むしろ健康状態の維持・向上に資しているとの考え方から、労働が不効用ではなく効用を生む場合を含めて、合理的な個人が予算と時間の制約の下で意思決定を行う理論的なモデルを構築し、消費や労働がどのように決定されるのかについて考察を加えた。 残念ながら科研費の交付内定を受け、本格的に研究環境を整えられる状態になってから半年程度ということもあり、本研究に関して年度内に論文の投稿や学会発表を行うに至っていない。なお、研究代表者が平成26年度に発表した論文は全て昨年度以前から継続して行っている研究に関わるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は平成23年度、平成24年度の健康保険組合の組合別データを情報公開請求によって入手し、パネルデータの構築を行った上で、データ分析を行った。当初の予定では健康保険組合における所得格差の変化やその要因(年齢構成の変化)を明らかにした上で、健康状態や医療費の決定要因と企業内での所得格差との関係に焦点を当てた上で、健康状態や医療費を決定する要因を明らかにすべくモデルを構築することとしていた。残念ながら時間的な制約があり、モデルについては過去の研究で使用したモデルを暫定的に使用してデータ分析を行ったほか、格差と健康に関して理論的なバックグラウンドが弱いという指摘を受けて、前述したように労働が不効用ではなく効用を生む場合を含めて、合理的な個人が予算と時間の制約の下で意思決定を行う理論的なモデルを構築し、消費や労働がどのように決定されるのかについて考察を加えた。 このように当初は予定していなかった理論的な研究を行ったこともあり、研究の実施は当初の予定よりもやや遅れているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はまず、平成25年度の健康保険組合の組合別データを情報公開請求によって入手し、平成19年度から平成25年度までの7年度分のパネルデータを構築する。その上で健康保険組合パネルデータを用いて、健康状態や医療費の決定要因と企業内での所得格差との関係に焦点を当てた上で、健康状態や医療費を決定する要因を明らかにすべくモデルを構築する。また、東日本大震災の影響を受けた地域に立地する組合とそうでない組合との基本統計量を東日本大震災の前後で比較し、従業員の年齢構成や給与水準、入職・採用状況といった基本的属性にどのような違いが見られるのかを考察する。その上で、差分の差検定(DID)などを用いてリーマンショックや東日本大震災が企業内での所得格差や年齢構造に与えた影響や健康状態に与えた影響を考察したい。さらには、理論的なモデルについてはその研究成果を論文としてまとめ、来年度には学会や研究会、ワークショップなどで発表できるように研究を進める予定である。 なお、研究代表者のホームページにおいて研究経過・研究結果に関わる論文などを適宜公開し発信する。ひいては得られた研究成果と政策に与える示唆を分かりやすく、広く一般の国民に訴えるための一助としたい。
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