2014 Fiscal Year Annual Research Report
サイコパシーの利己的行動に罰が影響を及ぼす可能性の検討
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26885116
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
大隅 尚広 広島修道大学, 人文学部, 助教 (50737012)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 社会生理心理学 / 反社会的パーソナリティ / 意思決定 / 報酬と罰 / 脳波 / 自律神経系 / 公正性 / サイコパシー |
Outline of Annual Research Achievements |
サイコパシーは冷淡さや衝動性などを特徴とし、犯罪などの反社会的行動と強く関連するパーソナリティである。これまでの研究では、サイコパシーの傾向が高い個人は適切に恐怖を喚起することができず、それが原因で刑罰などに応じた行動の修正ができないと考えられていた。ただし、罰の存在によって喚起された感情や生理的反応の低下が、実際に反社会的行動の原因であることは示されていない。また、罰の側面には、罰金のような実害を伴う側面と、評判の下落のような社会的罰の側面があるが、社会的罰の影響は不明である。このような背景から、本研究では罰の有無や罰の種類に応じた行動と身体反応の関連性におけるサイコパシーの影響を検討することを目的とした。 社会的生活の中では、一般的に、公正性を保つために自分の利益を犠牲にすることがある。そのような場面を実験室実験として採用し、サイコパシー傾向が公正な行動に及ぼす影響を検討するために、まず、想定型調査を実施した。調査の参加者は他者との金銭分配を想定し、分配した金額によっては他者から罰を受ける場合と、そのような可能性がない場合を設定した。また、参加者と他者との連続的な関係性の有無を設定した。その結果、他者が罰する可能性があるか否かは、サイコパシー傾向が高くても不公正な行動がほとんど見られなかった。一方で、他者との連続性が想定されるか否かによってサイコパシーの行動の変化が確認され、相手が見知らぬ他者で、罰を受ける可能性がない場合に、サイコパシーによって不公正な行動が多くなることが明らかになった。この結果から、サイコパシーの不公正な行動の背景には、自己の評判が強く影響するものと考えることができる。この結果をもとに、自己の評判の下落という社会的罰を取り入れて実験を行い、行動の選択の際の心臓活動とと脳波を測定し、脳における身体反応の情報処理を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、外部研究機関の協力のもとでデータを集めることができている。データについては解析の途中であるが、別に実施した予備的調査では仮説を裏づける結果が認められ、本実験による分析結果においても期待された結果を得ることができるという見通しが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画のとおり、脳波を測定して利己的行動における身体活動の情報処理の影響を捉えるという本研究の目的を達成するために、研究代表者の所属機関外の研究者の協力を得て、比較的大規模な生体信号計測装置を使用する研究を行う。 また、研究代表者の所属機関に生体信号計測装置を導入したことにより、所属機関での予備的研究が可能となった。これにより、実験の手続きなどに関する問題点の有無を早期に検討することができ、予定される所属機関外の大規模装置を用いた研究を効率的に遂行することができる。実験デザインの洗練性や実験結果の予測性を高め、将来的な研究の進展および研究目的の達成をより確実なものとする。
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