2014 Fiscal Year Annual Research Report
企業勃興期における「商業登記公告」のデータベース化とその分析
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26885119
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
草野 真樹 九州産業大学, 商学部, 講師 (10735210)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 企業勃興 / 商業登記公告 / データベース / 経済史 / 経営史 / 商業史 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる平成26年度は、まず商業登記公告のデータベース化を進めるため、『福岡日日新聞』のデータ収集を重点的に進めた。具体的な作業は次のとおりである。新聞の残存状況が良好である九州歴史資料館(福岡県小郡市)を主たる調査先に選び、同館において『福岡日日新聞』に掲載された明治30年代の「商業登記公告」をデジタルカメラにて撮影した。次に、撮影した画像の情報、たとえば、会社の場合は、商号、本店の住所、目的、資本金、設立年月日、取締役と監査役の氏名および住所、商号の変更などをエクセルに入力し、データベースとして構築した。 主たる作業内容は上記のとおりであるが、新聞資料をカメラにより撮影し、それを文字情報としてデータベース化するという作業は、思いのほか相当な時間と労力を要する。また、福岡県における明治期の商業登記公告を網羅するためには、『福岡日日新聞』に加え、『門司新報』の撮影・入力作業も行わなければならない。しかし、『門司新報』については、まだわずかしか着手できていない。 上記の理由から、平成26年度は、専ら資料の撮影とデータ入力に費やされた。平成27年度は、撮影と入力作業のピッチをあげてデータベースを早期に整え、本格的な分析に着手し、具体的な分析結果を公表するよう進めていく。 なお、同館での資料調査の段階において、新たに見出した、いわば福岡県の資産家番付である明治29年の「長者鑑」という一次資料を所属する九州産業大学商学部の紀要(『商経論叢』第55巻第2号、2014年11月)に「資料紹介」として復刻し公表した。この資料は、現在作成を進めている商業登記公告のデータベースとリンクさせて分析することにより、企業勃興の担い手の特徴をより深く検討できる可能性を秘めたものである。今後の研究において活用したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、当初の予定どおり新聞に掲載された「商業登記公告」の複写・撮影・データ入力をすすめ、本格的な分析を行うためのいわば土台づくりを行った。 『福岡日日新聞』については、九州歴史資料館に所蔵されているものを複写・撮影した。撮影については比較的順調に進んでいるが、データ入力にかなりの時間を要している。また、明治期における福岡県内の商業登記公告を全て網羅するためには、『福岡日日新聞』だけではなく、『門司新報』の複写・撮影、入力作業も進めなければならない。『門司新報』については作業が遅れ気味のため、一連の作業速度をあげる必要がある。 以上、データベース化すべき資料は依然として残されているが、本格的な分析に着手できるだけのデータは整いつつあり、研究の目途は立ったと考えている。データ入力にかなりの時間を要したため、研究成果を発表・公刊するまでには至らなかったが、初年度の目的であったデータベースの構築という観点からみれば、本研究はおおむね順調に進展している。また、平成26年度においては、資料調査の際に見出した「長者鑑」という一次資料を復刻し公表した。この資料は、企業家の出自を検討するうえで貴重なものであり、今後の研究において活用できるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成26年度に入力したデータベースをもとにして、計画通りに分析作業をすすめていく。また、その研究成果は、社会経済史学会、経営史学会などの主要学会において報告し、研究論文として公刊する予定である。 具体的には、第一に1900年から1912年までの期間における企業勃興の分析を行う。会社設立地と会社役員居住地の関係性、企業家の所得水準と出自(商人、士族、地主)などを他の資料群も併せて利用しつつ検討し、企業勃興の担い手の特質を明らかにしたい。この分析を通じて、明治期全般における地方の企業勃興の構造的特質に迫っていく。第二に、「商業登記公告」の基本データ(会社の場合であれば、商号、所在地、目的、資本金、設立年月日、取締役および監査役の氏名と住所、商号の変更など)について、第三者が利用できるような形での一覧表として作成し、それを公刊できるように進めていく。 なお、本研究の大きな問題点として資料の撮影・データ入力に想定以上の時間を要する点があげられる。したがって、データ入力についてはアルバイトを雇用し、入力作業のピッチをあげていくことも検討しなければならない。ただし、その場合には少なくとも旧字の読解能力が必要となる。平成26年度においては、その適任者を周囲で見出すことができなかったが、新たに適任者が見つかった場合には、共同での入力作業も検討していく。
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Research Products
(3 results)