2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26885120
|
Research Institution | Miyazaki International College |
Principal Investigator |
渡邊 耕二 宮崎国際大学, 教育学部, 助教 (30736343)
|
Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
Keywords | 数学学力 / PISA / 国際比較 / 途上国 / 読解力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、国際比較を意図する学力調査のデータを分析対象とし、わが国の生徒が有する数学学力の特徴を国際比較の立場から多面的かつ実証的に明らかにするとともに、そこで得られる知見を低い学力と称され得る途上国の数学教育協力に繋がる示唆の獲得へと活かす。 数学学力を規定する要因の一つに、読解力といった言語的な側面に目が向けられることは珍しくない。わが国の途上国に関する数学教育研究においても、数学の文章問題に取り組む際に、問題文を正しく理解できないことが問題視されている。 そこでPISA2003とPISA2012のデータを二次分析し、数学学力と読解力の関連性について経年変化を含めて検討した。その結果、日本をはじめとする数学学力が国際的にみて高い国では、国内における数学学力と読解力の関連性が大きいことが分かった。その一方で、数学学力の水準が低い国、例えばブラジルやチュニジアあるいはインドネシアでは、数学学力と読解力の関連性が小さいことが認められた。つまり、日本といった数学学力が高い国の背景として、それを担保する読解力の存在を肯定的に捉えるべきと考える。逆に途上国といった低い数学学力の国においては、読解力が十分ではなく、読解力の向上が必然的にもたらす数学学力への貢献は、決して小さくないと考えられる。この研究成果は、現在投稿中である。 また、PISAといった国際的な学力調査では、重複テスト分冊法や項目反応理論が利用されている。数学教育研究において、PISAあるいはTIMSSの二次分析による研究は、必ずしも多くないと指摘されているため、項目反応理論を活用するといった方法とその分析事例を提示したことも本研究の成果の一つと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度では、読解力を主とする言語的な側面から数学学力を国際比較分析した。一般に、数学学力が国際的にみて高い国は、同様に読解力も高い水準にある。しかし数学学力と読解力は、異なる構成概念であるため、それらが各国国内でどの程度関連するのかは定かではない。本研究では、数学学力と読解力の関連性の大きさも、数学学力の水準と関係することを捉えた。また、項目反応理論を用いるなどし、PISAのデータを活用する方法とその分析事例を提示することができた。 加えて、数学学力を多面的に検討するために、数学学力と情意面および学習方略との関連性に関する分析にも取り掛かった。得られた研究成果は、論文として投稿し、公表する予定である。 このように、平成26年度の研究はおおむね順調に進めることができたと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度も研究計画に従い、研究を推進していく。平成26年度では、PISAのデータを主な分析対象として研究を進めた。本研究では、TIMSSのデータにも目を向ける。TIMSSでは、読解力に関する調査は行われていないため、数学学力と情意面および学習方略に関する分析を中心に取り組む。TIMSSのデータについては、調査実施機関のウェブサイトから入手しており、PISAの分析結果と照らし合わせた考察が可能なように、必要な変数の選択とデータ処理に取り組んでいる。また、日本といった数学学力が高い国と対比させながら途上国の特徴を捉えるために、多母集団を同時に扱う統計的手法を採用し、分析を進めていく。つまり次年度では、TIMSSのデータを用いた分析を主として進め、PISAとTIMSSの分析結果を統合して得られる知見の獲得を試みる。
|