2014 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ流体内光電気効果の解明と、複数一分子操作への応用
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26886004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 禎生 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70731214)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | マイクロ・ナノデバイス / システムオンチップ / 1分子計測 / 流体工学 / 表面科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ナノ流体空間内の光電気効果による局所静電場発生機構を用い、自在な光パターンで複数の微小粒子や生体分子を非接触操作できる光ナノ流体回路技術を開発することです。その礎として、本年度は、光学実験系、電気実験系、各種ファブリケーション法の確立を進め、光電気効果を用いた微粒子操作の土台を作りました。具体的には、デバイスへの光パターン照射とイメージングのための光学顕微鏡やDigital Micromirror Deviceなどの各種光学素子を組み合わせた光学系を、デバイス測定のためのオシロスコープやファンクションジェネレータを組み合わせた電気系を構築し、光電気デバイス機能を測定・解析できるプラットフォームを完成させつつあります。さらにナノ流路の簡便な作成や高い光導電性を有するアモルファスシリコン膜の成膜のためのファブリケーション方法の確立を推し進めました。ナノ流路作製法はスピンコートしたフォトレジストを光硬化させた後、これを熱して極薄の接着剤として使うことにより、非常にシンプルに流路天井と床となるガラス同士の間隔をナノスケールで制御するものです。従来法はガラスをエッチングして、ガラス同士を張り合わせるものであり、コストも時間も遥かにかかるものでした。本方法は、斬新で簡便で汎用性の高い基本技術となると期待しています。高い光導電性を有するアモルファスシリコンは最適化されたPlasma Enhanced Chemical Vapor Deposition(PECVD)法を必要とするため、複数の国内大学や企業をめぐり、質の高い成膜を可能とするPECVDシステムを模索しました。信頼性の高い光学系・電気系・各種マテリアルや構造が揃ったことにより、目的であるナノ流体光電気デバイスの開発に向け、大きく前進しています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体としては、光学実験系、電気実験系の確立、デバイスやマテリアルのファブリケーション方法開発と、目的に向かって確実に前進しており、概ね順調に進行しています。しかし難航したのは、アモルファスシリコン膜の成膜に必要なPlasma Enhanced Chemical Vapor Depoition装置を探す点でした。装置を所有していても公に公表していなかったり、共有装置として貸し出すことをしていなかったりして、限られた選択肢を求めて日本中を巡ることとなりました。ナノ流路作成においては、東京大学武田先端知ビルの共有装置を使わせていただき、順調に進展しています。光学実験系や電気実験系も、順調に構築を終えています。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に進めたファブリケーション法の最適化を進める一方で、すでに確立した光学系・電気系・デバイスなどを融合させることで、目標であるナノ流路内での光電気効果を用いた微粒子操作の実現を進めます。 ①作製したアモルファスシリコン膜の光応答性を確認します。国内大学においてPECVD法を用いて作成したアモルファスシリコン膜の光導電性を定量的に評価します。 ②マイクロビーズ、蛍光ビーズのOptotlectronic Tweezersによる操作を実証します。ビーズは視認しやすく、退色の問題もなく、比較的容易にデバイスの実験的実証が行えます。Digital Micromirror Deviceでパターンした光による光電気的な微粒子操作を実現します。 ③金ナノ粒子や量子ドットの操作の実証を目指します。これらの微粒子は既に従来の光ピンセット技術では補足の難しくなってくる大きさを有しており、挑戦的な課題となります。この実証を礎に、最終目標である分子操作に挑みます。
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