2014 Fiscal Year Annual Research Report
変形機構解明に向けた高延性バルクナノ結晶Fe-Ni合金のメゾスケール組織の観察
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26886014
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
松井 功 独立行政法人産業技術総合研究所, 構造材料研究部門, 研究員 (40738085)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 電析 / バルクナノ結晶メタル / 引張特性 / メゾスケール組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、電解析出法(電析)により高強度・高延性バルクナノ結晶メタルを作製し、引張変形に伴う組織変化を解析し、電析ナノ結晶材料の変形メカニズムを明らかにすることである。H26年度は、電析を用いてバルクナノ結晶Fe-Ni合金の作製を行った。本合金は、Ni濃度~43 at.%、FCC構造、結晶粒径~13 nm程度を有していた。引張試験においては、引張強度1.7 GPaに加えて引張伸び13%という優れた延性を示した。高強度・高延性電析バルクナノ結晶Fe-Ni合金に対して、micro-XRDを用いて、破断部付近の組織変化について解析を行った。破断部に近づくにつれ、(111)面の配向度が減少し、(200)面の配向度が増加する傾向が確認された。一方で、(111)ピーク、(200)ピークの半値幅においては、明確な変化は確認されなかった。従来の転移を変形の起点とする粗粒材料においては、引張変形により転位密度が増加することで、半値幅の増加が確認されている。これらの結果から、本研究で作製した電析バルクナノ結晶Fe-Ni合金は転移を起点とした変形メカニズムが働いていないことが示唆された。また、近年、5%程度の延性を有するナノ結晶Ni-Fe合金において、引張変形により、粒成長および(111)面と(200)面への配向することが報告されている。同時に、これらの合金における組織変化は、結晶粒の回転に起因していると報告されている。本研究で作製したFe-Ni合金においては、粒成長は確認されておらず、延性の向上により従来のナノ結晶メタルとは異なる変形メカニズムが発現している可能性があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
micro-XRDを用いた組織変化について解析を行ったが、当初、予定していた走査イオン顕微鏡や透過型電子線後方散乱回折法を活用した電析バルクナノ結晶Fe-Ni合金におけるメゾスケール組織の観察を十分に行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
電析バルクナノ結晶メタルの変形メカニズムの解明に向け、走査イオン顕微鏡や透過型電子線後方散乱回折法を活用した電析バルクナノ結晶Fe-Ni合金におけるメゾスケール組織の観察を予定していたが、Fe-Ni電析浴が不安定であり予定していた試料作製に遅れがでている。今後は、より安定した電析浴であるNi-W電析浴を用いて試料作製を行い、変形メカニズムの解明に取り組んでいく予定である。
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