2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26887004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木原 工 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (80733021)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 比熱測定 / 極低温 / 核比熱 / 強磁場 / 重い電子系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、非常に短い時間スケール(1~10 ms)で比熱測定を行うことで、極低温・強磁場領域における原子核スピンの巨大な磁気比熱を緩和時間の違いによって分離し、電子比熱を精密に測定することを目的としている。平成26年度の後半(2014年10月 - 2015年3月)は、これまでの研究をベースに測定系の改良を行った。従来は、高速で比熱を測定するために、薄膜の温度計およびヒーターをスパッタリング法により試料表面に直接製膜していた。この手法を用いると1ミリ秒以下の時間で比熱を測定することができる。本研究では、薄く研磨したサファイア基板上に温度計とヒーターを製膜し、それを試料に貼付けて比熱測定を行う。そのためのサファイア基板形状の最適化を行った。基板の厚さや試料と接触する面の表面形状などをパラメータとして、強度や試料-基板間の熱伝導などを評価した。基板形状に関しては、大凡最適な形状を見出すことができた。またその他に、測定プローブの設計や測定制御のためのプログラミングなどを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高速で比熱測定を行うために重要となるのは、温度計及びヒーターの熱容量を十分小さくし、且つ試料―温度計(ヒーター)間の熱伝導を大きくすることである。これに関しては、熱伝導の高いサファイア基板を直径2-3 mm、厚さ0.05 mm以下程度まで小さくすることで10 ms以下の時間スケールで比熱測定が可能であることを既に確認している。基板形状を最適化したことで試料周りのセットアップについては準備が整いつつあり、おおむね順調に推移していると言える。しかし本研究で使用する東北大学金属材料研究所強磁場超伝導材料研究センターの超伝導マグネットおよびクライオスタットに搭載するプローブは、未だ完成しておらず実際の比熱測定には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
測定プローブの作製を進めると同時に、測定精度の向上を目的として温度計やヒーターのパターン形状の最適化やノイズ対策等を行う。極低温領域では、試料の熱容量が小さいため、電気的なノイズによって温度計やヒーターが発熱し、精密な比熱測定が困難な場合がある。本研究ではバンドパスフィルタやトランス回路を実際の測定回路に合わせて自作することで測定精度の向上を目指す。測定系の評価には、銅等の核比熱の温度・磁場依存性が良く調べられている標準物質を用いる。測定系が整い次第、Pr系カゴ状物質PrT2Zn20 (T=Ru, Rh, Ir)にこの手法を適用する。この物質の低温の秩序相において、核比熱の存在によって詳細が不明であった電子比熱の精密測定を行う。
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