2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26887017
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
岡本 葵 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (40735148)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 初期値問題の適切性 / Chern-Simons-Dirac方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,時間発展を伴う非線形偏微分方程式の初期値問題の適切性を,方程式の構造に着目してより広いクラスの初期値に対して解明することが目的である.平成26年度は,空間1次元Chern-Simons-Dirac方程式の初期値問題の適切性及び非適切性を研究協力者の町原秀二氏と共に研究し,次の結果を得た. 先行研究では,いわゆる逐次近似法により適切性が証明されていた.我々は,逐次近似法においては先行研究で得られていた結果が最良であることを示し,それ以外の範囲における適切・非適切となるソボレフ指数を決定した.特に,適切となる指数の領域が非凸集合となることを証明した.適切性の証明においては,強い特異性が現れる部分を特定し,その部分だけを抜き出して取り扱うことに成功した.その他の部分については,非線形項の構造を最大限活用することにより良い性質を有することを示した. また,非適切性については,非線形項に内包される強い特異性をいかに抜き出すかが鍵となる.臨界ルベーグ空間においては適切性が得られていたが,尺度臨界な指数を持つソボレフ空間においては非適切となることを証明した.Chern-Simons場に比べてゲージ場の正則性が高い場合には非線形項から強い特異性だけを分離して取り扱うことが困難であった.適切性の証明で得られていた解の級数展開を利用して,各項の精密な評価を行うことにより,その困難を克服した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
適切となるソボレフ指数を平面上で完全に分類し,適切となる指数の領域が非凸集合となる結果を得た.逐次近似法を用いては適切性が得られない指数に対しても,特異性を詳細に観察することにより,適切性が証明された.また,その強い特異性を利用して解の集約を人工的に作り出すことに成功し,非適切性も得られた.空間1次元であろうともこのような結果は知られておらず,期待以上の進展が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は物理的な背景が薄い空間1次元のモデル方程式についての研究を行い,非線形項の特異性を精確に捉えることに成功した.平成27年度はそのような手法が物理的な背景を有する方程式,具体的にはハミルトン構造を有するChern-Simons-Dirac方程式やDirac-Klein-Gordon方程式など,に対して有効であるかを検討し,前年度までに培われた手法をより広範な方程式に適用可能なものとなるようさらに発展させる.
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Research Products
(4 results)