2014 Fiscal Year Annual Research Report
複素幾何における標準計量及び測度と標準束の正値性に関する研究
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26887036
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
菊田 伸 東京電機大学, 工学部, 助教 (40736790)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | リッチ曲率が負のケーラー・アインシュタイン計量 / 準射影代数多様体 / 境界挙動 / 対数的標準束の正値性の境界における退化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は, 準射影代数多様体上の負のリッチ曲率を持つ概完備ケーラー・アインシュタイン計量の境界因子の近くでの挙動を, 境界に対する標準束の正値性の観点から調べた. 特に, 標準束が巨大, もしくは自明である場合を詳しく考察した. 準射影代数多様体は, 対数的標準因子の正値性があるとき, 負のリッチ曲率を持つ概完備ケーラー・アインシュタイン計量を許容することが小林(亮), Tian-Yauらによって知られている. 完備な空間の幾何的情報を得るためには, 計量の無限遠への挙動が重要である. 従って, ケーラー・アインシュタイン計量の境界挙動を決定することが本研究の最大の目標である. これまでの先行研究としては, Schumacher氏が対数的標準因子が境界上でも正値性を持つ場合を調べている. そしてケーラー・アインシュタイン計量を境界に漸近させると, 境界上のリッチ曲率が負のケーラー・アインシュタイン計量に近づくことを得た. このSchumacher氏の結果により, 境界に対する標準束の正値性とケーラー・アインシュタイン計量の境界漸近には関わりがあると目論んでいる. 詳しくはケーラー・アインシュタイン計量を境界に漸近すると, 境界の一般化されたケーラー・アインシュタイン計量に近づくと予想している. 平成25年度には, この予想の境界に対する標準束が巨大である場合に, ケーラー・リッチ流を用いた証明方法を考えついた. 今年度は, その証明の細部を正確に詰めることができた. これでSchumahcerの結果を一般化したことになる. この成果は幾つかの学会で講演した. また論文として投稿できる準備も整っている. 更に, 境界に対する標準束が自明である場合も解決するために, 様々な関連する講演に参加し, 情報を収集した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度に準射影代数多様体のケーラー・アインシュタイン計量の境界漸近に関する予想を立てた. 更に, その対数的標準束が境界上で巨大である場合に, ケーラー・リッチ流を用いた証明を考えついた. 今年度は, その証明の細部を正確に詰めることができ, 幾つかの学会にてその成果を紹介する講演をした. またその成果を論文にまとめ, 投稿する準備もできている. しかし, 実際にはアイデアとしては平成25年度のものであり, 今年度は予想の新しい場合の成果を得ることができなかった. 特に対数的標準束が境界上で自明である場合が今年度の達成目標であったが, 様々な関連するであろう講演を聴いて参考にしても解決までは至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
準射影代数多様体上のケーラー・アインシュタイン計量の境界漸近に関する予想を, 対数的標準束が境界上で自明である場合に解決することを考える. Kolodziejや最近ではGuenancia-Wu, Nezza-Luによって準射影代数多様体上の複素モンジュ・アンペール方程式に関する解の様々な境界挙動が得られている. この結果は我々の問題と密接に関係していると考えている. よって彼らの結果を正確に理解して, 我々の問題に応用できるかどうかをを確認したい. またそれと並行して, 典型的な例である複素球体の非コンパクト商のトロイダルコンパクト化を具体的に調べることで, この場合の予想が正しいことを確かめようと考えている. 更に同時進行で, 小林測度双曲性に関しても, 標準束の中間の正値性を測る小平次元と関連した中間の小林測度双曲性を測る様な測度を見つけ出したい. そしてそれを複素曲面の場合に, 小平による分類を用いて, 細かい性質まで導き出すことを考えている. 例えば, 小平次元との対応や, 小平次元の普遍被覆での不変性への応用等を想定している.
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