2014 Fiscal Year Annual Research Report
リーマン多様体上の最適化アルゴリズムの発展およびその諸分野における問題への応用
Project/Area Number |
26887037
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
佐藤 寛之 東京理科大学, 工学部, 助教 (80734433)
|
Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
Keywords | 最適化 / アルゴリズム / 応用数学 / 数理工学 / 幾何学 |
Outline of Annual Research Achievements |
実行列の特異値分解は実シュティーフェル多様体上の最適化問題として定式化できるが,その最適化問題に対するニュートン法においては,ニュートン方程式をそのまま解くのが困難であり,最大特異値のみを求める部分問題に分割し,特異値を順次計算してゆくアルゴリズムが提案されていた.研究代表者らは,クロネッカー積などを用いてこのニュートン方程式をそのまま解く方法を提案し,当該年度において日本応用数理学会や日本オペレーションズ・リサーチ学会で研究成果を発表した.また,複素行列に対する特異値分解も同様に複素シュティーフェル多様体上の最適化問題として定式化でき,この問題を実数で表される問題として再定式化し,その問題に現れるリーマン多様体上の共役勾配法を提案した.提案手法はニュートン法と異なり大域的収束性を持つため,ニュートン法と組み合わせることで大域的収束性と速い収束速度の両立を図った.この結果は 53rd IEEE Conference on Decision and Control にて発表した. ユークリッド空間においては様々な共役勾配法が提案されており,それらの収束性が議論されているが,リーマン多様体上の共役勾配法に対する理論は未だ整理されていない.研究代表者らによって,以前に scaled vector transport という写像を用いた Fletcher-Reeves 型の共役勾配法が提案され,その収束性が証明されていた.当該年度では,この手法を Dai-Yuan 型の共役勾配法に適用し,新たなアルゴリズムを提案するとともに,その収束性の証明も行った.提案手法では,強ウルフ条件ではなく通常のウルフ条件を満たすようにステップ幅を選べば大域的収束性が保証されることを示した.これらの成果は既に論文にまとめ,現在,国際学術誌に投稿中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究実施計画では,次の3つを目標として挙げていた:(1) 特異値分解問題をシュティーフェル多様体上の最適化問題として扱ったときのニュートン方程式に対する効率的な解法の提案;(2) リーマン多様体上の共役勾配法の発展;(3) リーマン多様体上の最適化手法の他分野の応用問題への適用.このうち (1), (2) では一定の成果を挙げ,(1) については学会等で発表を行い,(2) については成果をまとめた論文を国際学術誌に投稿中である.(3) については,当該年度の研究・調査により様々な応用問題を検討し,一部の問題に対しては実際に成果を得ており,それをまとめた論文を国際会議のプロシーディングとして投稿中である. こうしたことから,本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる.今後は,(1), (2) の成果の学術誌での発表および,(3) に関する研究のさらなる進展に努める.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究により,正準相関分析やトポグラフィック独立成分分析といった統計手法もリーマン多様体上の最適化によるアプローチで新たなアルゴリズムが導出できることが分かった.さらに,制御工学において現れる諸問題についても,リーマン多様体上の最適化問題として定式化され得る問題が多数あることが分かった.そこで,こうした問題に対するアルゴリズムを完成させて,各分野における既存手法との比較を行う. また,平成26年度に引き続き,ユークリッド空間における様々な非線形共役勾配法をリーマン多様体上に拡張する.その際,これまでの研究で提案した scaled vector transport という概念を有効活用する.さらに,リーマン多様体上の制約付き最適化問題に対して最適性の条件に関する議論を深め,新たな最適化手法を提案する.
|
Research Products
(7 results)