2014 Fiscal Year Annual Research Report
希有な対称性を有する大環状配位子の創出とその形状を生かした多核金属錯体の機能開拓
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26888003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中村 貴志 筑波大学, 数理物質系, 助教 (90734103)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 超分子化学 / ホストゲスト化学 / 金属錯体 / 環状分子 / 分子認識 / 動的共有結合 / 配位結合 / 大環状配位子 |
Outline of Annual Research Achievements |
「希有な」対称性の大環状配位子の創製のため、アルデヒドと一級アミンを同一分子内に有する新規な二官能性モノマーを複数、設計・合成した。モノマーから大環状配位子を作る連結反応として、可逆なイミン結合を利用する手法を種々検討した。これは、結合生成が可逆なために熱力学的に安定な単一の最終生成物を得やすく、またイミンの窒素原子が金属配位部位として利用できることを期待したためである。検討の結果、以下のことが明らかになった。(1) ピリジン環にアルデヒド基とアミノ基を導入したモノマーを、亜鉛イオンをルイス酸およびテンプレートとして連結反応を行うことで、環状ピリジルアミン四量体が選択的に得られた。この四量体は、種々の金属イオンを選択的に捕捉するイオノフォアとしての働きが期待され、また、向きのある環状分子としてキラルな超分子のビルディングブロックとして展開可能である。(2) ピリジルカルバルデヒド基とアミノフェノール基を有するモノマーを原料とした環状分子合成を検討した。芳香環の電子状態・溶解性・イミン形成反応の制御を目的として、異なる置換基を導入したモノマー前駆体を複数合成した。そして、連結の素反応効率・環状化合物と鎖状高分子の選択性を向上させるために、種々の溶媒・濃度・温度などの環化反応条件を検討した。その結果、アルデヒド基を保護した前駆体からの、ワンポットでの脱保護反応およびイミン形成反応が有用であることが明らかとなり、これにより環状六量体が選択的に得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「希有な」対称性の大環状配位子と金属配列の達成のため、平成26年度は、二官能性モノマーの設計・合成、およびそのオリゴマー環化反応による大環状分子の合成を検討する計画であった。研究実績で述べた通り、本年度では、(1) ピリジン環にアルデヒド基とアミノ基を導入したモノマーを用いた環状四量体の合成、(2) ピリジルカルバルデヒド基とアミノフェノール基を有するモノマーを用いた環状六量体の合成、を達成した。特に、(2)の環状分子は、内孔に向けたN,N,O-の三座キレート配位部位を有する、当初の計画設計通りの特長を有する大環状配位子であり、今後のオリジナルな機能創製が多いに期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、平成27年度では、平成26年度で合成を達成した大環状配位子を用いて、(1) 異種多核金属錯体の合成と物性探索、および (2) 動的かつ非対称な分子認識と反応開発の研究を行う。具体的には以下のとおりである。 (1-i) キレート配位した金属の交換が遅い性質を利用し、後から第二の金属イオンを加えて環中心部に集積させた、異種多核金属錯体を合成する。配位構造が金属の電子状態に大きな影響を与える第一周期遷移金属 (Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn) の様々な組合せについて検討する。特に、剛直な環状配位子の対称構造が与える制約を受けて中心部の金属に生じる、元素固有の軌道の対称性 (Oh, Td, など) と異なる歪んだ配位構造に着目して研究する。(1-ii) 外部配位子との交換反応による特異な幾何構造の多核錯体の活性部位と反応機構の解明を行う。(1-iii) 酸化還元反応により、中心と周縁部の階層構造を有する異種多核金属錯体に特徴的な多電子移動反応について調べる。 (2-i) 配位結合を介したゲスト分子認識能の金属イオン濃度によるアロステリック制御を目指す。特定の濃度の化学シグナル存在下でのみ機能する分子は、生体のようなフィードバックによる恒常性を有するシステムの創成につながる。(2-ii) ホスト/ゲスト複合体の詳細な解析を行う。特に、ホストの対称性とゲストの対称性に着目した複数の安定状態間の動的な変化や包接後の非対称化の様式を解明する。(2-iii) 得られた知見を基に、大環状錯体の内部空間を利用した基質反応へと研究を展開する。 また、引き続き新規なモノマーの設計と機能性環状分子の合成検討を行う。
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Research Products
(9 results)