2014 Fiscal Year Annual Research Report
半導体三次元キラルフォトニック結晶を用いた円偏光レーザ
Project/Area Number |
26889018
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 駿 東京大学, ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構, 特任助教 (60731768)
|
Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
Keywords | 電子デバイス・機器 / フォトニック結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、半導体三次元キラルフォトニック結晶またはその微小共振器に発光体を導入し、円偏光光源及び円偏光レーザを実現することを目的としている。当該年度では、目標達成の第一歩として、キラルフォトニック結晶に量子ドットを導入することで、円偏光フォトニックバンドおよびバンド端を利用した円偏光光源の実現を目指した。 まず、近赤外光に対して円偏光フォトニックバンドが形成されるように、近赤外光の波長と同程度の周期のキラルフォトニック結晶を計算により設計した。これは、極低温でのInAs自己形成量子ドットの発光波長領域に合致する。次に、設計した構造をGaAsに対して、電子線リソグラフィー技術、ドライエッチング技術、ウェットエッチング技術、マイクロマニピュレーション技術を駆使することで作製した。作製した構造のキラリティは左巻きで、InAs量子ドットは構造内に高密度で埋め込まれている。 これらの量子ドットを光励起し、発光する近赤外光を偏光を調べながら分光したところ、円偏光バンドギャップ内にて右回りの円偏光が50%の純度で検出され、かつ、円偏光バンド端では左回りの円偏光が50%の純度で得られた。これは、キラル構造によって左回り円偏光の真空場状態密度が大きく制御されたことによるものである。発光体の自然放出は、周りの真空場による誘導放出と捉えることができる。円偏光バンドギャップ内では、左回り円偏光の真空場状態密度が大きく抑制されたため、右回り円偏光が高い純度で発光し、円偏光バンド端では、左回り円偏光の群速度が小さく、状態密度が著しく増大したため、左回り円偏光が高い純度で発光したと考えられる。 ここで得られた成果は、3件の国内学会で口頭発表により報告し、1件の国際学会で口頭発表予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、半導体三次元キラルフォトニック結晶またはその微小共振器に発光体を導入し、円偏光光源及び円偏光レーザを実現することを目的としている。当該年度では、当初の計画どおり、最終的な目標への第一歩として、キラルフォトニック結晶に量子ドットを導入することで、円偏光フォトニックバンドおよびバンド端を利用した円偏光光源の実現を目指した。 その結果、InAs量子ドットを導入した、三次元キラルフォトニック結晶の作製に成功し、円偏光バンド構造による円偏光真空場の状態密度を制御することで、高純度な円偏光光源を実現した。この成果は、当初の予定どおりの進展である。
|
Strategy for Future Research Activity |
当該年度において、当初の計画どおり、円偏光光源の実現に成功した。今後は、まずこの円偏光発光が、真空場状態密度を反映した結果であることを裏付けるために、円偏光発光寿命の測定を行う。 量子ドット内に形成される励起子(電子正孔対)は、ある時間を経て電子と正孔が結合して発光する。この発光寿命は、周囲の真空場状態密度の影響を受け、状態密度が低いほど遅くなり、時間平均して発光強度が弱くなる。このことから、円偏光バンドギャップ内での左回り円偏光の発光は、右回り円偏光の発光と比較して、発光寿命が長いと予想できる。このことが確認できれば、円偏光状態密度の制御が、キラル構造によって保証されるため、周囲の環境の変化に強い円偏光光源として今後の応用に期待できる。 一方で、さらなる高純度な円偏光光源及び円偏光レーザの実現も目指す。まずは、円偏光フォトニックバンド端における状態密度の顕著な増大を利用した、円偏光レーザ発振の実現を目標とする。次に、キラルフォトニック結晶内に意図的に欠陥を導入することで、円偏光共振器モードの形成を目指す。適切な構造周期や周期数、導入する欠陥構造やそのサイズなど、最適な構造を計算で模索することには困難が伴うが、共振器モードはその狭い帯域のため、円偏光状態密度の差を著しく拡大することができる。このようなキラルフォトニック結晶微小共振器を作製し、さらに高純度な円偏光光源光及び低閾値円偏光レーザの実現を目指す。
|
Research Products
(5 results)