2014 Fiscal Year Annual Research Report
アジア開発途上国の高濁水源の活用に向けた膜ろ過プロセスにおける膜閉塞機構の解明
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26889019
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 崇史 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80735712)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 東南アジア / 開発途上国 / 膜ろ過 / 接触角 / 無機膜 / 膜ファウリング |
Outline of Annual Research Achievements |
アジア開発途上国における膜ろ過を用いた浄水プロセスの適用における膜閉塞機構の解明を目的に、本年度はモノリス型無機膜に対する非破壊式膜面解析手法の開発、及び東南アジア地域の河川表流水としてタイ北部のチェンマイ地域を流れるピン川の水質特性の把握と膜ろ過適用性の検討を行った。 モノリス型無機膜の膜面解析に関しては、ボアスコープを用いて直径2.5mmの円筒型チャンネル内に滴下した液滴を撮影することによる実験手法を開発し、解析に適用した。液滴には水、及びグリセリンを用いた。その結果、水は膜面で液滴を形成せず接触角は0°であった。グリセリンは膜面で液滴を形成したが凹型で、その接触角は30-35°であった。セラミック平膜の場合の接触角はおよそ75°であったことから、円筒構造が液滴の形状と接触角に影響することが明らかとなった。 東南アジア地域の河川表流水の水質特性の調査を、乾季である2014年11月に実施した。対象としたピン川の濁度は10-16NTUであった。無機成分としては、溶存態マンガンが0.2 mg/Lと表流水としては高い濃度で存在していた。鉄は0.8 mg/Lほど存在し、その多くはコロイド状、粒子状の形態で存在していた。地質由来の無機物を多く含むことを確認した。有機物濃度は2.0-2.8mg/L、SUVA値は1.2-1.7程度であったことからフミン質は低濃度であった。 膜ろ過においては前処理として静置貯留することで、濁質の沈降、溶存態マンガンの酸化が進み、膜閉塞が25%ほど軽減された。このことより途上国において維持管理が容易で持続的に運用が可能な膜ろ過前処理の提案が可能と言える。膜ファウリングについては、塩酸を用いた薬品洗浄結果より鉄やマンガンの閉塞が卓越していたことが分かったが、膜抵抗がろ過前まで戻らなかったことより濁質由来のシリカ等の膜ファウリングの可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度はモノリス型無機膜の非破壊式膜面分析手法の開発、東南アジア地域の河川表流水の水質特性の把握とその膜ろ過特性の調査を行った。 開発したモノリス型無機膜のチャンネル内における接触角の測定手法については、今後、膜ろ過後の閉塞した膜に適用していき、その解析を行っていく。 乾季における河川表流水の水質特性とその膜ろ過性の調査を実施した。河川表流水への膜ろ過適用性については、数時間オーダーの膜ろ過試験と薬品洗浄試験により膜ろ過性、および閉塞物の特性を捉えることが可能であり、雨季についても同様の試験を行うことで、乾季・雨季を含めた膜ろ過適用性の評価方法の開発が可能と考えている。 パイロット実験による連続運転による膜ファウリング機構の解明に向け、パイロット実験装置の運転準備も実施してきており、現地協力機関であるタイ国チェンマイ大学との協議の上、連続実験における役割分担、実施計画を共有し、平成27年度より連続運転を実施することを決定している。また、連続運転に向けて装置の試運転を行い課題を抽出し、対応策を講じており、連続運転試験の準備は整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に得られた結果を受け、①無機膜の膜面解析および膜ファウリングの解析手法の開発では、引き続き曲率を持つチャンネル内の接触角からの表面状態の解析方法の開発を進めていく。また、接触角のみでは得られる膜表面の情報が限定的であることから、より詳細な解析が可能となる量子ドットを用いた膜閉塞の解析手法の開発を新たに行う。コロイド粒子としての量子ドット、または量子ドットで標識をした有機物や無機物のサロゲート物質を用いて膜ろ過を行い、膜ファウリングにおけるファウリング物質の動態を解析する手法を確立する。その上で膜ろ過におけるファウリング物質の動態の解析を行う。 また、②東南アジア地域の河川表流水の水質特性の調査に関しては、前年度は乾季を対象に実施したが、今年度は雨季における調査を実施し、その水質特性を明らかにする。同時に雨季における膜ろ過への影響調査も実施する。前年度の調査で、河川表流水中の鉄やマンガンに加えて、地質由来のシリカなどの膜ファウリングへの影響が示唆されている。それらの物質の存在形態に関しても、有機物との複合体の形成を含めて調査していく。乾季、雨季の水質特性および膜ろ過性から、膜ろ過適用性の簡易評価方法を確立する。 ③チャオプラヤ川上流域の河川表流水を原水とした膜ろ過パイロット試験を実施し、乾季、雨季における熱帯地域の水源水質の長期運転における膜ろ過への影響を明らかにし、現地で持続的に適用可能な前処理方法、膜洗浄方法を提案する。目的①、②で確立した方法の検証を行う。 現地での調査、実験に関しては、タイ国チェンマイ大学との協力関係を構築済みであり、実施計画、役割分担を共有している。 熱帯地域に特徴的に水質に起因する膜ろ過特性について、前年度に得られた結果を取りまとめて第6回国際水協会アジア太平洋地域会議(H27年9月、北京)にて発表の予定である。
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Research Products
(2 results)