2014 Fiscal Year Annual Research Report
階層的マトリクス構造を基盤とした都市環境計画方法論に関する研究
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26889033
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高取 千佳 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (10736078)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | マトリクス構造 / 緑地 / 熱・風・水環境 / 多主体参加型 / 都市環境計画 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度は、(1)マトリクス類型:研究対象地である東京・名古屋大都市圏都心部を対象に、経年的なデータ整備により、自然的・都市的基盤に基づく計画単位としてのランドスケープ・ユニットの有効性の検証と精緻化を行った。具体的には、名古屋市を対象に国土数値情報地形(5mDEM)・都市計画基礎調査・緑の実態調査のGISデータを整備した。さらに、街区を単位とし、その三次元的な分布と占有率、混合形態による指標を設定し、マトリクス類型として、ランドスケープ・ユニット(微地形と土地被覆の代表的な組み合わせ)の設定を行った。さらに、二地域間の比較分析を行い、都市環境計画の基礎的単位としてのランドスケープ・ユニットの有効性を検証した。以上の成果を、国際学会IASUR(査読付きアブストラクト)において発表した。(2)マトリクス構造に対する熱・風・水環境評価と階層間の相互関係性の解明を行った。海洋研究開発機構との共同研究により、東京都心部を対象に夏季昼間のヒートアイランド日を対象に、熱・風環境シミュレーションにより、上空との熱交換・水平方向の移流効果による気温低減効果の有意性を検証した。以上の成果はH26年日本都市計画学会にて論文集(査読付き)に採用され、発表を行った。また、ドイツIOER研究所に訪問し、マトリクスを基盤とした都市環境計画方法論について発表し、意見交換を行うと共に、3月には国連大学において開催された公開シンポジウムにおいて成果発表を行った。(3)名古屋大学周辺部では、マトリクス分類に基づく多主体参加型緑地環境マネジメント法方法論の構築として、名東区藤巻町を対象に、住民参加型の緑地管理手法について約15回にわたりワークショップ・意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
東京・名古屋大都市圏都心部におけるマトリクス類型と評価に関しては、データ整備・類型・熱風環境評価までは大きく進展した。しかしながら、以下の二点が達成されておらず、平成27年度の課題である。[1]東京都心部における熱・風環境評価の妥当性(海風侵入の方向や夜間の評価)、[2]名古屋市における雨水涵養機能に関する評価と、[1]による指標と統合し、マトリクスの評価手法の体系化による、他都市へ適用可能とすること。一方、国内におけるマトリクス構造を基盤とした都市環境マネジメント手法に関して、諸外国との情報交換・連携については、ドイツIOER研究所、またドルトムント工科大学を訪問し、今後の計画論へ導入する上での可能性や課題について、有意義な意見交換を行うことができ、平成27年度も継続して連携していくこととなった。また具体的な対象地における多主体参加型の都市環境マネジメント手法に関しては、藤巻町を始めとして地域住民や行政に対して、研究成果を発表し、計画論を実践へと応用することが可能となったことから、大きく成果が挙げられたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度では、以下の三点を継続・進展させる。[1]マトリクス構造に対する熱・風・水環境評価と階層間の相互関係性の解明:主に名古屋大都市圏都心部を対象に、マトリクス構造の都市環境計画に対する有効性を明らかとする。これまで行ってきた熱・風環境評価に加え、雨水涵養に有意なマトリクス指標を抽出し、計画原単位としての有効性を論じる。さらに、自然的基盤に基づく段階的・適切な対策案としてのシナリオ検討と、時間スケールの検討(季節・日変動)を踏まえたシミュレーション評価をArcGISを用いて行う。これにより、マトリクス構造を基盤とする都市環境計画論を体系化する。[2]都市環境計画体系の日独比較:ドイツIOER研究所との研究交流を継続し、日独の都市環境計画の比較検証を行う。ドイツIOER研究所には熱・風環境評価を都市計画に展開する研究の蓄積がある。9月にはIOER研究所の研究者と名古屋大学にて共同シンポジウムを企画・開催し、日独諸都市における都市形成の過程や土地被覆変化の際を踏まえた都市環境計画の今後の展開についての比較分析を行う。さらに、共同講義の実施等の研究体制を整備しながら、広域・都市・地区スケールでの計画論に対する議論を深め、国内の緑地計画制度の課題を明確にする。[3]多主体参加型の都市環境マネジメントの可能性の検証:[2]までで得られた成果を元に、名古屋都心部で地区スケールでの具体の対象地(都心・郊外部)を選定し、実践面での方法論の検証を行う。具体的には、名古屋市東部丘陵地に位置づく名東区藤巻町、低地部の荒子地区を対象とし、マトリクス類型と評価を提示した上で、地区スケールで関連するステイクホルダーを整理し、都市開発・緑地保全の両面から、複数シナリオを実施し、意見交換を行う。このように、既存の緑地制度体系の課題抽出と合わせ、マトリクス構造を基盤とした計画論を展開する。
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