2014 Fiscal Year Annual Research Report
盛土内に設置されたヒンジ式プレキャストアーチカルバートの被災メカニズムの解明
Project/Area Number |
26889036
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澤村 康生 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20738223)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | ヒンジ式プレキャストアーチカルバート / 盛土 / 東北地方太平洋沖地震 / 遠心模型実験 / 有限要素解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年3月の東北地方太平洋沖地震では,盛土内に設置されたヒンジ式のプレキャストアーチカルバートにおいて甚大な被害が発生した.これまで同構造の耐震性については,カルバート横断方向(盛土軸方向)について検討されており,高い耐震性を有すると考えられてきた.しかし,先の大震災では,これまで十分な検討がされてこなかったカルバート縦断方向(盛土軸直角方向)で大きな被害が発生した. 本研究では,ヒンジ式プレキャストアーチカルバートの縦断方向の耐震性について,東北地方太平洋沖地震における被災状況の整理と遠心力載荷実験,数値解析を実施し,同構造の被災メカニズムの解明を目指す. 平成26年度は主に被災状況の整理と遠心模型実験を実施した.被災状況の整理においては,同構造の耐震性に影響を及ぼすと考えらえる,断面の大きさ,土被り,盛土形状,縦断勾配等に着目して整理を行った.その結果,被災したカルバートでは,抗口付近において盛土勾配が変化する場合や土被りが小さい場合が多く,坑口部の盛土形状がカルバート盛土の耐震性に影響を与えている可能性が高いことが明らかとなった. そこで遠心模型実験では,上記の分析をもとに,①盛土高さ,②盛土勾配,③坑口壁面から盛土勾配までの距離,をパラメータとして,遠心力50Gにおける振動実験を実施した.その結果,カルバート盛土の変形量は,土被りの増大と比例して大きくなる可能性があるが,坑口部に一定の土被りを設けることで,抗口部のカルバートの挙動が安定することが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,当初の計画通り,東北地方太平洋沖地震における被災状況の整理と遠心力載荷実験を実施した. 東北地方太平洋沖地震における被災状況に際しては,被災したカルバートの諸条件(断面の大きさ,土被り,盛土形状,縦断勾配等)について整理を行った.また,被災状況の整理と併せて,これまでの施工実績についても整理した.これにより,ヒンジ式プレキャストアーチカルバートの使用用途や標準的な断面について確認し,実験条件を決定する上での参考とした. 遠心模型実験では,①盛土高さ,②盛土勾配,③坑口壁面から盛土勾配までの距離,をパラメータとして,計4ケースに対して複数回の実験を実施した.実験では,湿潤砂を用いて締固めにより地盤を作製したため,地盤材料の乾燥により含水比が変化し,実験結果がばらつくことが懸念された.しかし,実験後の含水比を含め,実験結果は一定の再現性を有していることを確認した.遠心模型実験より,坑口部に一定の土被りを設けることで,抗口部のカルバートの挙動が安定することが明らかとなった. 以上の理由から,本研究の達成度はおおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,主に数値解析により検討を進める.具体的な手順は以下の通りである. a)遠心模型実験で使用した地盤材料に対する要素シミュレーションを実施し,解析モデルとパラメータを決定する.なお,地盤材料に対する基礎試験(三軸試験等)は既に実施済みである. b)遠心模型実験の再現解析を実施し,数値解析手法の適用性を検証するとともに,実験結果の補完を行う. c)同構造の耐震性に影響を与える要因についてパラメトリックスタディを実施し,各種パラメータが同構造の地震時挙動に与える影響を明らかにする.本研究における主なパラメータは,①盛土高さ,②盛土勾配,③坑口壁面から盛土勾配までの距離,とする.
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