2014 Fiscal Year Annual Research Report
その場ナノ観察による自立単結晶銅ナノ薄膜の疲労き裂進展に及ぼす膜厚効果の解明
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26889038
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
近藤 俊之 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70735042)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 材料強度学 / 薄膜 / 疲労 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,膜厚がサブμmオーダである金属ナノ薄膜の疲労き裂進展特性とき裂進展機構,およびそれらに及ぼす膜厚効果の解明を目的とする.本年度は,膜厚が異なる自立単結晶銅ナノ薄膜試験片の作製およびその場原子間力顕微鏡(AFM)観察が可能な疲労試験機の設計・開発を行った. 単結晶銅ナノ薄膜試験片は,単結晶塩化ナトリウム(NaCl)を(100)面でへき開した後,機械研磨を施した基板に対して,基板表面温度を約300℃に昇温した状態で製膜することで作製した.これにより,NaCl基板の方位に沿ってエピタキシャル成長した単結晶銅ナノ薄膜試験片を製膜できた.製膜後,NaCl基板を超純水で溶解させることで,ナノ薄膜試験片を基板から自立化して大気中へ取り出した.膜厚は約300 nmと約600 nmの2種類とし,これらの疲労き裂進展試験を実施することで,微視組織の影響を排除して膜厚効果を検討できる. 自立ナノ薄膜用その場AFM観察疲労試験機は,AFMのXYステージ上に疲労試験機を搭載し,AFMの走査プローブの直下で自立金属ナノ薄膜の疲労き裂進展試験が可能な構造とした.疲労試験機は,大変位移動用のインチワームステージの上部に疲労荷重負荷用の積層型ピエゾアクチュエータを設置し,これとロードセルを同一軸上に配置することで,自立ナノ薄膜試験片に対する高繰返し速度(最大30 Hz)の疲労荷重負荷を可能とした.AFM 観察時には一定荷重を負荷した状態で疲労き裂先端を観察する.この時,ピエゾアクチュエータは電気ノイズによりnmオーダで振動するため,ピエゾアクチュエータの電源を切り,インチワームステージを変位させることで一定荷重を負荷する.本装置を開発することで,疲労き裂先端に生じる疲労損傷をnmオーダでその場観察することが可能となる.本年度は,薄膜試験片に対して疲労荷重の負荷が可能であり,また,引張荷重を負荷した状態で薄膜表面のAFM観察が可能であることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに,膜厚が約300 nmと約600 nmの異なる膜厚の単結晶自立銅ナノ薄膜試験片の作製を達成した.また,自立ナノ薄膜用その場AFM観察疲労試験機は,自立ナノ薄膜試験片に対する疲労荷重の負荷,および引張荷重を負荷した状態で薄膜表面のAFM観察が可能であることを確認した.このように,当初の計画通りに進展しており,次年度より疲労き裂進展機構に及ぼす膜厚効果の検討が可能である.
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Strategy for Future Research Activity |
膜厚約600 nmと約300 nmの単結晶自立銅ナノ薄膜試験片に対して,同一の力学条件(切欠き長さ,疲労荷重負荷条件)で疲労き裂進展試験を実施し,それぞれの膜厚における疲労き裂進展特性を明らかにする.このとき,試験を一旦中断し,試験片を試験機から取り外し,電界放射走査型電子顕微鏡を用いて疲労き裂を広範囲にわたって観察することで,巨視的な疲労き裂進展過程を明らかにする.つぎに,疲労き裂先端近傍のその場AFM観察を実施し,それぞれの膜厚における疲労損傷やすべり線の性状を詳細に観察することで,疲労き裂進展機構に及ぼす膜厚効果を考察する.
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Research Products
(3 results)