2014 Fiscal Year Annual Research Report
インパクトフレッティング試験による生体材料の腐食摩耗挙動の解明
Project/Area Number |
26889047
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
佐藤 善紀 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20739362)
|
Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
Keywords | トライボロジー / 機械材料・材料力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
実際の装置等で生じているフレッティングでは,荷重が動的に作用していると考えられ,特に衝撃荷重時の影響は無視できない.また,これまで行われてきた純水中におけるインパクトフレッティング摩耗試験から,動的な荷重と新生面の酸化といった化学的作用が相乗的に作用し,摩耗がインパクトのみの場合やフレッティングのみの場合に比べ,激しくなることが分かっている.そこで本研究では人工股関節といった生体溶液(腐食溶液)環境にさらされている耐食性材料の腐食摩耗特性について明らかにするため,腐食溶液中で試験が可能なインパクトフレッティング試験装置の開発を行った. フレッティングでは微小な振幅の高精度制御と,高い剛性を持つ試験装置が不可欠となる.そのため,動力にはピエゾアクチュエータを2本用い,それらをPCからPI制御することでインパクトフレッティングの再現を試みた.現状,ピエゾアクチュエータそのものの制御は行えているが,接触力のフィードバックによる振幅制御には至っていない.これは開発した装置の剛性が予想よりも低かったことが原因と推測される. 本研究ではさらに,電気分極試験による金属材料の腐食特性の検討を行った.電位急変法と呼ばれる急速な電位の掃引により,新生面の腐食特性について水温,電気伝導度,酸化時間をパラメータとして検討した.これにより,純水中における摩耗の温度依存性と,腐食溶液中における腐食の温度依存性が活性化エネルギーにおいてほぼ一致し,純水中における金属イオンの溶出が裏付けられた.これについてまとめられた結果は,Wear of Materialsにて発表される予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請当初は腐食溶液環境下におけるインパクトフレッティング試験装置を開発し,摩耗試験を行うまでが目標であった.しかしながら26年度は装置の剛性不足から十分な摩耗試験を行うことができず,試験装置の開発において遅れがあったことは否めない. しかしながら,次年度から行う予定であった分極試験による耐食性材料の新生面の腐食特性を先行して行った.これにより,温度依存性を示すパラメータである活性化エネルギーの点について過去の研究結果と比較し,新たな知見を得ることができた.またこの結果は摩耗モデル構築の一助となるものである. よって総合的に研究そのものに遅れはないものと考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
インパクトフレッティング試験装置のスライダ部分の剛性が荷重制御に大きく影響することがわかっている.また接触力を測るロードセルの剛性が高すぎる場合,制御がよりシビアになる.そのため複数のロードセルを用意し,適したロードセルの剛性を見極める必要がある.また,インパクトフレッティング試験装置にポテンショスタットと呼ばれる分極試験装置を組み込み,試験片に生じる電位降下を測定し,摩耗における腐食の影響の程度について明らかにする. 試験片の分極特性を動電位法から検討し,材料の腐食電位等について整理する.この腐食電位により,材料そのものの腐食のしやすさが明らかとなる.また電位急変法およびファラデーの法則から新生面の不働態化における溶出量を特定する.この時,生体環境ではアルブミンといったタンパク質が吸着することにより不働態化が促進されるといった研究結果もあり,それについても検証する. 腐食摩耗は酸化皮膜の生成とそれらの除去が繰り返されることで,相乗的に摩耗が増大するといわれている.しかし機械的な条件によっては,酸化皮膜が潤滑作用を示し,摩耗を低減させる場合がある.これは通常の摩耗試験のみから定量することは非常に難しいものの,本研究の分極試験装置を導入することで,検討可能である.これらの研究から,各種材料の耐摩耗性,新生面の腐食特性についてマッピングし,生体環境に適した材料の特定を行う.また,腐食摩耗モデルを作成し,腐食環境下におかれた構造物の寿命予測について検討する.
|