2014 Fiscal Year Annual Research Report
建築目地防水に関わる早期劣化診断と寿命管理技術の開発
Project/Area Number |
26889070
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Research Institution | Building Research Institute |
Principal Investigator |
宮内 博之 独立行政法人建築研究所, 材料研究グループ, 主任研究員 (40313374)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 建築構造・材料 / 建築防水 / シーリング材 / 寿命 / 劣化診断 / 非破壊試験 / 管理技術 / 接着性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では建築目地防水に関わる早期劣化診断と寿命管理技術の開発を行うことで,漏水の防止と目地の耐久性向上を図り,以下の項目を検討する。1.シーリング目地故障の要因調査:シーリング目地が損傷する要因を設計・施工・管理の観点から検討する。2.非破壊試験機の開発:非破壊でシーリング目地の故障・劣化診断できる試験機を開発する。3.非破壊試験方法の提案:提案する非破壊試験機の妥当性と適用範囲を検討するため,シーリング材断面,劣化条件を変えて実験を行い,既存の試験方法との比較検討を行う。4.非破壊試験方法の適用方法の検討:非破壊試験機を用いて劣化診断を実施し,非破壊試験方法の適用方法や適切な診断法を提示する。 平成26年度では,シーリング目地故障について調査し,シーリング材施工時に影響を受ける初期故障要因と,耐久性に係わる中長期故障の要因に分けて分析を行った。その結果,シーリング材と部材間の接着面で不具合数が最も多く,目地接着不良に対する評価を行うための非破壊試験方法の提案が重要であることを示した。また,シーリング目地非破壊試験機の開発を中心に研究を進め,非破壊で試験可能かどうかを検討するために,円形の治具を作製し,接着不良を再現した試験体を用いて静的圧入試験を実施し,シーリング目地の圧入荷重と圧入深さとの関係を求めた。また,試作した非破壊試験機を用いて,シーリング材の強度及び目地形状の影響の検討を行なった。その結果,非破壊予備試験では,シーリング目地形状の違いによって試験結果が異なり,試験条件により非破壊試験法の適用範囲を考える必要があると考えられた。 これら成果については,「シーリング目地の非破壊接着性試験法の検討」と題して,日本建築学会関東支部研究報告集I(pp121-124,2015.3.2)で研究成果発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に対する研究達成度について,平成26年度の目標である3つの評価指標と達成度の根拠は以下の通りである。 評価項目1:「シーリング目地故障の要因調査:シーリング目地が損傷する要因を設計・施工・管理の観点から検討するとともに,改善点を提示する。」に対する達成度の根拠:シーリング材施工時に影響を受ける初期故障要因と,耐久性に係わる中長期故障の要因に分けて分析を行った。その結果,施工に関する要因は初期故障に大きく影響を与えるとともに,中長期的にはシーリング材と部材間の接着面での不具合を引き起こす原因となることが分かった。このため,シーリング目地の管理の観点から,本研究で提案する非破壊試験法の適用が重要であることを示した。 評価項目2,「非破壊試験機の開発:シーリング目地の表面の強度・変位量等による物理量を利用して,非破壊でシーリング目地の故障・劣化診断できる試験機を開発する。」に対する達成度の根拠:非破壊試験機の測定部を模した円形の治具を作製し,接着不良を再現した試験体を用いて静的圧入試験を実施した。 評価項目3:「非破壊試験方法の提案:提案する非破壊試験機の妥当性と適用範囲を検討するため,試験室内でシーリング材断面,劣化条件を変えて実験を行い,既存の試験方法との比較検討を行う。」に対する達成度の根拠:試作した非破壊試験機を用いて,シーリング材の強度及び目地形状の影響の検討を実測し,既存の引張試験結果との相関性について評価し,本非破壊試験の適用範囲について考察した。 以上より,平成26年度に設定した研究計画は十分に達成していると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究については,平成26年度に得られた結果を基に,以下の項目について研究を実施していく。 1.シーリング目地非破壊試験機の開発:シーリング目地長手方向に計測可能な移動接触型非破壊試験機を製作し,既存試験とのデータの置き換えも可能な応力・変形計測システムを提案する。具体的には,以下の方法で非破壊試験機を開発する。①移動可能な非破壊試験機:屋外使用を想定した持ち運び可能な試験機とする。②荷重検出部:目地方向に移動しながら荷重を検出できるローラー式治具とする。③変位検出部:所定の変位に設定し,ローラーから伝達される荷重を安定的に計測する。④加圧方法:ローラー式治具に一定の加圧力が発生可能なガス圧式機構とする。特に,現場で本試験機を使用でき,短時間にシーリング目地の強度や耐久性の状況を確認できる方法を提案する。 2.シーリング材の強度及び目地形状の影響の検討:新たに製作する非破壊試験機を用いて,材料強度・劣化度及び目地形状を変えた実験を実施し,本試験法で得られる試験結果と,既存の引張接着性試験結果との相関性を評価することで,非破壊試験法としての信頼性をさらに高めていく。シーリング目地試験体の条件は,シーリング材の目地幅と目地深さ,目地の接着状態とする。非破壊試験機の試験変数は,目地幅に対するローラー厚さ比,ローラーの負荷移動速度,圧入深さとする。この試験体と非破壊試験機の条件の相関関係を求め,シーリング目地の非破壊試験法に適用できる範囲を検討する。 3.非破壊試験の適用方法の提示:シーリング目地診断において,現場で非破壊試験機を用いて試験し,その結果が平成26年度の室内試験(非破壊試験,引張試験)とどのような関係があるのかを比較検討する。非破壊診断の妥当性を検討するために,通常の1次・2次診断(目視観察,指触観察)と3次診断(硬度試験,引張試験)との比較も行う。
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