2014 Fiscal Year Annual Research Report
シリコーンゴムを利用した微細パターニング技術における転写メカニズムの解明
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26889075
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
日下 靖之 独立行政法人産業技術総合研究所, フレキシブルエレクトロニクス研究センター, 研究員 (00738057)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 印刷エレクトロニクス / シリコーンゴム / レオロジー / 乾燥 / 付着力 / 界面破壊 / パターニング / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
各種溶媒に対するPDMSの溶媒吸収特性を評価し、溶媒の吸収特性および飽和蒸気圧をもとにマイクロコンタクト印刷用耐エッチングレジストインクの開発を進めた。PDMSへの溶媒吸収速度が早い低沸点溶媒と、吸収速度が遅い高沸点溶媒を混合することにより、インク粘度、インク膜厚および乾燥性を同時に調整することが可能になった。すなわち、低沸点溶媒の配合量を調整することによって、ハンコへのインク塗布工程における粘度を最適化し、後続するインク膜の乾燥過程においては、低溶媒吸収速度・高沸点溶媒と固形分の比率によってインク膜の乾燥性を制御する事に成功した。マイクロコンタクト印刷特性およびコロイドプローブAFMによる半乾燥膜の変形・付着挙動との対応を調べることにより、付着力と半乾燥固化に関する最適条件を評価した。その結果、膜の乾燥が不足している場合はインク膜が印圧によって歪むため良好なパターンが得られない一方、乾燥が過大の場合はインク膜の付着力が低下するために良好な転写ができないことが明らかになった。 上記の半乾燥性制御技術を基盤とした応用研究として、全印刷による埋込電極の形成および、パターン形状によらず均一膜厚、高矩形断面のパターニングが可能なコンタクトインキング式マイクロコンタクト印刷の開発に成功した。埋込電極の形成法は、PDMSゴム上で半乾燥固化したナノ銀インクパターンの上に絶縁性インクを塗布し、両層を一括して転写することにより、印刷面の段差が非常に小さい埋込電極が形成できる方法である。一方、コンタクトインキング式マイクロコンタクト印刷法は、平坦なPDMSゴムシート上に一度インク膜を塗布し、その後マイクロコンタクト版と当接させることにより所望のパターンのみを版に受理する方法で、最小線幅500nmのナノ銀配線の形成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、マイクロコンタクト印刷を対象とし、シリコーンゴムを利用した高精細パターニング実現の条件として、印刷に重要なインク膜-シリコーンゴム間の付着力およびインク膜粘弾性を定量的に評価する技術を開発できた。また、これらの特性を制御するために必要なインク組成およびゴム材料物性との対応も明らかにでき、印刷インクの設計指針を得ることができた。さらに実験を進める中で、PDMSに塗布されたインク膜を転写するために必要な剥離力(塗布界面付着力)」と「PDMSに転写されたインク膜を転写するために必要な剥離力(受理界面付着力)」が異なることを発見した。その理由として、塗布界面においてはインクからPDMSに溶剤が吸収されることによってPDMSの付着特性が変化したものと考察されたが、この現象を応用することによって、コンタクトインキング式マイクロコンタクト印刷法を着想し、その開発に成功した。またインク膜の乾燥制御技術を応用し、埋込構造を有する電極パターンの形成に成功した。本技術は積層デバイスにおいて下層パターンの凹凸に起因する後続層の断線を回避できる方法であり、高信頼デバイスの印刷製造に資する技術である。さらに埋込電極をソースドレイン電極として用いたボトムゲートボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタの動作実証を行った。上記二つの印刷技術は、本研究課題で得られた基礎的知見をもとに着想し開発されたものであり、当初想定された以上の成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は第一に反転オフセット印刷におけるパターニング性能に大きく寄与すると考えられる、インク膜の凝集破壊と界面破壊との関係に着目した研究を進める。具体的には、まず各種シリコーンゴムとインク膜間の付着力を剥離試験によって評価することによって界面破壊特性を評価する。次にパターン形成能への界面破壊特性の寄与を評価するために、反転オフセット印刷用凸版を用いずに、付着力のコントラストを有する平版を用いた新規パターニング技術を開発・実施する。その上で、平版式反転オフセット印刷と凸版を用いた反転オフセット印刷実験を比較することで、凸版エッジ部による応力がパターン形成能に与える影響を評価する。以上により、パターニング工程における、インク膜の界面破壊と凝集破壊の寄与をそれぞれ実験的に評価することが可能になると考えている。 第二に、上記の新規平版印刷方式を開発できれば、従来必要だった版のウェット洗浄工程が不要になる等の優位性を発揮することでき、また長尺ロール版の作製が容易になるため、印刷装置をR2R化、コンパクト化することができる。そこで本平版印刷技術については応用的観点も含めた研究開発を進める。 最後に、以上の知見を踏まえ、印刷エレクトロニクスの実用化を念頭においた印刷パターンの信頼性解析を進める。上述したように、研究を遂行するなかで、PDMS-インク膜間の「塗布界面付着力」とPDMS-インク膜間の「受理界面付着力」が異なることに気がついた。この問題は連続印刷性や転写欠陥の発生確率などの課題に対応するものと考えられるため、本現象に着目した各種信頼性解析を進める。
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