2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26890011
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田中 大介 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90456921)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 快情動 / 味覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
快情動自体はサッカリン水溶液を摂取させることで誘導した。研究計画では砂糖水を使用する予定であったが、砂糖水にはカロリーがあるため体内のエネルギーレベルを制御する恒常性維持機構への影響がある。一方、サッカリン水溶液は砂糖水と同等の甘さにより快情動反応が出るが、カロリーがないため恒常性維持機構への影響はなく、より情動反応に関与する神経細胞を同定し易いと判断されたため、本研究ではサッカリン水溶液を用いることにした。サッカリン水溶液の摂取により誘導される快情動の強度は、味覚反応テストにより定量的に測定することを試みた。この測定方法を本研究に適用するために、まずマウスの口腔にカテーテルを装着する手術を施した。約1週間後に、マウスを透明なアクリル容器に入れ、口周辺の動きを底面から動画撮影しながら、口腔に装着したカテーテルを介して1分間に0.5mLのサッカリン水溶液をマウス口腔に注入した。撮影されたマウスの反応を、過去の報告と同様に数値化し、快情動の強度とした。結果、過去の知見と同様の結果を再現性よく示す味覚反応テストの実験系を確立することが出来た。 さらに、味覚反応が表出している際に活動した神経細胞を同定するために、味覚反応テスト後に固定した脳内で最初期遺伝子のひとつであるc-fosを発現する細胞の同定を試みた。結果、少なくとも腹側淡蒼球でc-fos陽性になる細胞の存在を確かめることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では本年度の予定は「味覚反応テストの実験系の確立」と「快情動の程度を変化させるより自然な操作法の確立」であった。前者に関しては、申請者自身に必要な手術の経験がなかったが、経験のある他の研究者に幸いにも教示してもらうことができたため、かなりスムーズに手技を覚えることが出来た。他の研究者は主にラットでその手技を用いていたため、それをマウスで最適化するために独自の工夫も重ね、最終的に再現性よく期待通りの反応が得られる実験系が予定通り確立された。一方後者については、前者の実験を進めていく中で当初期待していたような結果が出ないと判断され、そのまま実験を継続しても非効率的であると判断されたため中止にし、代わりに翌年度進める予定であったc-fosの発現を調べる実験を始めた。はじめ免疫染色法により検出することを複数の抗体で試みたが、注目していた腹側淡蒼球などでは検出できなかった。そこでIn situ hybridization法に切り換えたところ、うまく検出することができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、予定通り、側坐核や腹側淡蒼球において、サッカリン水溶液を摂取した際に検出されるc-fos陽性細胞の特徴を調べる実験を進めていく。これまでの膨大な知見より、側坐核には2種類のGABA作動性medium spiny 投射ニューロンがあることが分かっている。ひとつはいわゆる「直接路」を構成する細胞で、Drd1aやSubstance Pを発現し、淡蒼球や中脳に投射する。もうひとつは「間接路」を構成し、Drd2やEnkephalinを発現し、淡蒼球に投射する。快情動の発現に伴い、側坐核の殻の特定のmedium spiny 投射ニューロンでc-fosの発現が変化している可能性を検討するために、c-fosとSubstance PまたはEnkephalinの共染色を行う。また側坐核には、全神経細胞の90-95%を占める上記medium spiny投射ニューロンの他に、5-10%を占める介在ニューロンが存在する。それら介在ニューロンはsomatostatinやcalbindin, calretinin, parvalbumin, アセチルコリンの発現によりサプタイプを区別することができるため、投射ニューロンと同様にこれらマーカーとc-fosの共発現も調べる。
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