2014 Fiscal Year Annual Research Report
細胞増殖シグナルの再構成による癌細胞のMEK阻害剤抵抗性の解析
Project/Area Number |
26890015
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小松 直貴 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (30737440)
|
Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
Keywords | 細胞周期 / 生細胞イメージング / 発現誘導 / mTOR / 細胞増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は細胞内シグナル伝達経路の一つであるERK経路およびmTORC1経路が細胞増殖に及ぼす影響の定量解析、およびERK経路・mTORC1経路活性の人為的制御による細胞増殖の再構成である。これら目的を達成するため、当該年度は以下を行った。 1.細胞周期を可視化するためのバイオセンサー発現細胞株の樹立:ERK経路およびmTORC1経路の細胞周期進行における役割を解析するために細胞核にてCFPが発現し、さらに細胞周期のG1期でRFPを発現、S/G2/M期でYFPを発現させるDNAコンストラクトを作製した。これをレンチウィルスを用いた遺伝子導入により、MCF10A細胞に導入した。この細胞を細胞培養インキュベータ付顕微鏡で経時的に観察したところ、細胞周期の進行に伴うRFPおよびYFP蛍光の発現が確認できた。続いてERK経路の阻害剤であるMEK阻害剤、およびmTORC1阻害剤をMCF10A細胞に単剤処理した際の細胞周期進行を観察した。するとどちらの阻害剤でも細胞周期はG1期にて停止していることが明らかになった。 2.mTORC1経路の人為的活性化システムの構築および検証:研究代表者のこれまでの解析によりMEK阻害剤はERK活性とmTORC1活性の両方を抑制すること、mTORC1活性と細胞増殖率に相関があることが示されている。本研究ではmTORC1経路の人為的活性化によりMEK阻害剤によるmTORC1不活性化をキャンセルした際の細胞周期進行の解析を計画している。そのための準備として、mTORC1上流であるAktの発現誘導系を構築し、mTORC1を人為的に活性化できるか検討した。その結果Aktの発現誘導ではmTORC1活性化は惹起されなかった。このため他の系によるmTORC1活性化が必要であると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞周期進行を可視化するバイオセンサーの安定発現細胞株を樹立するにあたり、レンチウィルスを用いた遺伝子導入を試みた。しかしながらウィルスゲノムの逆転写に起因すると考えられる組換えにより、バイオセンサーの遺伝子が正しく細胞に導入できなかった。この問題はバイオセンサーをコードする塩基配列の配列内における相同性を減少させることにより解決した。一方、mTORC1の人為的活性化についてはAkt分子の発現誘導では達成することができなかった。このため研究目的の達成度に若干遅れが生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずmTORC1活性の人為的活性化系の構築を目指す。これまでにAkt-mTORC1経路にはネガティブフィードバック機構が存在することが示されている。これにより時間周波数の小さい(遅い)Akt活性化ではmTORC1の活性化が起こらないことが示唆されている。Akt分子の発現誘導でmTORC1が活性化しなかったのはこのネガティブフィードバック機構による可能性が考えられる。そこでAktを速く活性化させるために光遺伝学ツールを用いることを計画している。具体的には青色光依存的に2量体化するCRY2-CIB系を用いることでAktを形質膜移行させる。この青色光による膜移行は数秒から数分で起きる反応であり、mTORC1経路の活性化に必要なAktの速い活性化を実現しうる。 続いてこのmTORC1人為活性化システムを用いて、mTORC1活性を人為的に活性化させた条件でMEK阻害剤処理を行う。この時の細胞周期進行を解析することにより、ERK活性が細胞周期を制御する作用点を明らかにする。加えてmTORC1阻害剤が細胞周期進行に与える影響を解析することにより、ERK活性およびmTORC1活性が細胞周期を制御する動作原理を明らかにする。 最後にこの解析をBRaf変異細胞およびKRas変異細胞で行うことで、MEK阻害剤感受性を説明しうる細胞周期制御機構の同定を試みる。またERK活性、mTORC1活性を人為的に制御することでMEK阻害剤感受性の細胞に抵抗性を付与することができるか検証を試みる。
|