2014 Fiscal Year Annual Research Report
癌細胞のスタチン系薬剤感受性を決定する分子メカニズム―感受性マーカーの探索―
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26890019
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
割田 克彦 鳥取大学, 農学部, 准教授 (40452669)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 薬効評価と予測 / がん細胞の特性 / 化学療法 / スタチン系薬剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、スタチン系薬剤が血中コレステロール値の低下作用以外に制がん作用を発揮することが報告され、がん細胞に対する効果が注目され始めた。スタチンの制がん作用が注目される一方で、本薬剤に対する反応性は細胞種によりかなり差が存在する。これまでに我々はNCI-60細胞パネルを用いて、スタチン系薬剤の1つであるアトルバスタチンの制がん作用を検討してきた。スタチンの作用点がHMG-CoA還元酵素(HMGCR)であることから、当初はその発現量の差が感受性を左右する因子ではないかと考えたが、各がん細胞間に大きな差はみられず、がん細胞のスタチン感受性を決める因子は未だ不明な点が多い。HMGCRは7つの遺伝子変異が報告されているが、そのうちの2つ(rs17244841とrs17238540)はスタチンの感受性に関わることが知られている。本年度の研究では14種のがん細胞株(大腸、卵巣、乳腺、肺、前立腺、メラノーマ、脳から各2種類)について、スタチン感受性とHMGCRの遺伝子変異との関連性を検討した。DNAシークエンス法によりHMGCR遺伝子を解析した結果、HCT-116においてHMGCRの遺伝子変異があることが明らかとなった。しかし、この細胞はスタチンに対して耐性株でも感受性株でもない中間株であり、HMGCRの遺伝子型とがん細胞のスタチン感受性との間に相関を見出すことは出来なかった。一方、これまでの研究で我々はスタチン感受性マーカー候補タンパクとしてE-カドヘリンおよびビメンチンを同定してきた。本研究ではこれらのタンパクの発現をsiRNAにより制御することで、がん細胞のスタチンに対する感受性が変化するか否かを解析することを試みた。スタチン耐性株がもつE-カドヘリンをノックダウンすることにより、スタチン感受性が増強する傾向がみられ、スタチン耐性の1因子として、E-カドヘリンの存在が強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HMGCR遺伝子の塩基配列の決定にあたり、CG繰り返し配列の多い領域ではPCRが予想通りにかからず数回のプライマー再設計が必要となったが、現在は解決済みであり、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
スタチン系薬剤はその作用の強弱によりスタンダードスタチンとストロングスタチンに分類され、また化学性状の違いにより脂溶性スタチンと水溶性スタチンに分類される。各スタチン系薬剤はHMGCRを阻害し、メバロン酸経路を抑制するという点では共通であるが、作用の強弱、コレステロール合成阻害以外の作用、薬物動態に関連した相互作用などは薬剤によって違いが存在する。今後はアトルバスタチン(ストロングかつ脂溶性スタチン)で得られた知見が他のスタチン系薬剤全般に共通するのかを調べる。まず始めにストロングかつ水溶性スタチンであるロスバスタチンを解析対象とする。スタチンの制がん効果の評価は、細胞増殖曲線の変化とMTT試験により行う。さらに蛍光マーカーである Filipin IIIを用いてコレステロールの染色を行うことで、メバロン酸経路阻害の程度を蛍光顕微鏡下で観察する。
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