2014 Fiscal Year Annual Research Report
Rasによるアクチン細胞骨格の再構成におけるNF-κBの役割
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26890024
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
川内 敬子 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 講師 (40434138)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | がん / NF-κB / p53 / アクチン / シグナル伝達 / Ras |
Outline of Annual Research Achievements |
がん抑制遺伝子産物p53はNF-κBの活性を抑制すること、またp53はアクチン細胞骨格の構造を変化させ、がん細胞の浸潤能を抑制することから、特にがん遺伝子Rasでトランスフォームした細胞におけるp53とNF-κBとの関係を明らかにすることで、NF-κBによるアクチン細胞骨格に対する役割を明らかにすることを試みた。 p53が野生型で発現しているNIH3T3細胞においては、Rasによるトランスフォームに伴ってβアクチンの切断が誘導されるが、p53ノックアウトマウス由来胎児線維芽細胞(p53-/-MEFs)では、見られない。しかしながら、p53-/-MEFsにおいてもNF-κBサブユニットp65をノックダウンすると、βアクチンの切断が誘導されることを新たに明らかにした。したがって、NF-κB はp53に関係なくRasによるβアクチンの切断を抑制していることが示された。βアクチンの切断は、p38MAPKがミトコンドリアに移行し、HtrA2/Omiを活性化することが重要であることは、これまで報告してきた。そこで、p65ノックダウンによるp38MAPKのミトコンドリア移行に対する影響を調べたところ、p65のノックダウンでp38MAPKのミトコンドリア移行が促進していた。また興味深いことに、Rasトランスフォーム依存的にミトコンドリアに局在しているp65の減少がNIH3T3細胞では見られたが、p53-/-MEFsでは見られなかった。つまり、p53はp65のミトコンドリア局在を阻害することで、p38MAPKのミトコンドリア移行を促進しているものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の計画内容の一つは、「Ras誘導性のトランスフォームに伴うp53依存的なHtrA2/Omi活性化にNF-κBが関与しているかを調べる」ことであったが、委託作成したHtrA2/Omiリン酸化抗体を用いたリン酸化の検出感度が悪かったため、これを調べることができなかった。しかしながら、HtrA2/Omi活性化に伴うβアクチンの切断についてNF-κBの関与を明らかにできた。さらに、平成27年度の計画内容である「p38MAPKのミトコンドリア移行におけるNF-κBの役割を調べる」ことについては、解析を進めた。NF-κBサブユニットp65のミトコンドリア局在がRasやp53によって制御されていること、さらにこれがp38MAPKのミトコンドリア移行およびβアクチンの切断と相関するという大変興味深い結果が得られ、研究が目標とするところまで進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
NF-κBのミトコンドリアにおける重要性を調べる。得られた結果を基にして、NF-κBがどのようにRasによるp38MAPK移行を阻害しているのかを解析を行う。トランスフォームしたNIH3T3細胞では、細胞質中のp53がp38MAPKのミトコンドリア移行を促進することから、ミトコンドリアに局在するNF-κBはp38MAPKのミトコンドリア移行を抑制しており、細胞質中のp53は、このNF-κBの作用を阻害していることが推察される。そこでトコンドリア局在型p65変異体およびその転写不活性型p65変異体を発現するレトロウイルスベクターを構築しこれらを用いて解析を行う。p38MAPK移行はミトコンドリアに局在するp65によって転写活性依存的に抑制されるのかを調べ、転写依存的であるならば、その標的遺伝子の同定を試みる。さらに、p53がp65のミトコンドリア局在を制御しているのかを調べる。そして、これらメカニズムとアクチン細胞骨格の再構成や細胞接着斑におけるNF-κBの役割との関連を調べる。 以上の得られた結果をとりまとめて、Rasによるアクチン細胞骨格の再構成におけるNF-κBの役割を示し、学会発表を行い、さらに論文の投稿を行う。
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