2014 Fiscal Year Annual Research Report
石西礁湖のサンゴメタ群集のコネクティビティ構造の解明
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26891007
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
竹垣 草世香(向草世香) 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 産学官連携研究員 (30546106)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 群集 / 時空間動態 / 一般化加法モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
石西礁湖および周辺海域のサンゴ群集の時空間動態を明らかにするために、これまで実施されてきたモニタリング事業を整理したところ、環境省モニタリングサイト1000(2013年度現在202地点)および環境省自然再生事業(2013年度現在32地点)があることが分かった。2つの事業の報告書とデータベースを確認し、サンゴ群集の構造(サンゴ被度やサンゴ生育型、新規加入量など)や撹乱要因(サンゴ白化率、オニヒトデ出現個体数、病気の有無、台風被害など)を電子データ化した。これまで散発的にまとめられてきた結果をデータベース化できたことは大きな成果である。しかし、2つの事業は調査方法が異なるため別途解析する必要があると判断し、今年度はモニタリングサイト1000データに関してサンゴ群集がいつ、どこで、どのように変化してきたか、また観測された様々な撹乱要因がサンゴ群集にどのような影響を与えたかを概略的に捉えることを目的とした。 各地点でのサンゴ被度の年変化は、クラスター解析により高い平均被度、2007年に急激に減少しその後低い被度、常に低い被度、という3つのグループに分類することができた。また、グループ化に影響する要因はサンゴ白化とオニヒトデという2つの撹乱要因の強度とミドリイシ類の新規加入数である事が分かった。 次に、各地点でのサンゴ被度の1年間の変化量を一般化加法モデルとAICによるモデル選択により検討したところ、年トレンドは観測地域に基づいてグループ化することができ、各地域において被度の減少をもたらす撹乱要因の影響を相対評価することができた(第17回日本サンゴ礁学会発表)。 また、オニヒトデ出現個体数とサンゴ白化率をそれぞれ一般化加法モデルで解析し、年トレンドが共通する地点をグループ化し、物理的環境条件との関連性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
石西礁湖とその周辺海域で行われてきた2つのモニタリング事業の結果はこれまで散発的にまとめられており、本研究でデータベース化できたことは非常に大きな成果である。しかし、異なる調査方法で得られたデータを統一する方法が見出せず、別途に解析する方針を取らざるを得なかったことは今後の課題となった。 今年度集中的に解析を行ったモニタリングサイト1000事業は、2013年現在202観測地点と膨大なデータ量であるため、各地点のサンゴ群集の動向を個別に把握することは難しい。サンゴの生息状況を表すサンゴ被度に着目した解析結果から、サンゴ被度の動態や撹乱要因の影響は観測地域ごとにグループ化できることが分かった。しかし同一グループの中でも、モデルの予測から大きく外れた被度変化を示す地点もある。今後は、このような地点の特徴を個別に解析する必要があると考えている。また、親サンゴの被度が高い、すなわち幼生供給能力の高い海域が選定することができたが、稚サンゴの加入成功率に関する解析はできなかった。 サンゴ群集の時空間動態に関しては平均的なふるまいを明らかにすることができたが、物理的撹乱要因として想定していた水温や波高、塩分濃度、陸源物質の濃度などの項目については、データの収集は部分的にとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
石西礁湖および周辺海域のサンゴ群集時空間動態に関して、今年度に遂行できなかった内容を進める。幼生加入に関するデータを解析し、稚サンゴの加入成功率加入成功率が高い海域の選定を行うとともに、幼生供給能力の高い海域とのギャップを明らかにする。物理環境データの収集と整理を行い、サンゴ群集動態との関連性を検討する。 また、海水流動モデルを用いて、浮遊幼生に見立てた仮想粒子放出シミュレーションを行う。得られた幼生分散行列をネットワーク理論にもとづき解析し、コネクティビティ構造を明らかにする。 さらに、局所生息地のサンゴ群集動態と生息地間の幼生分散ネットワークを再現したメタ群集モデルを作成し、各生息地がメタ群集全体の動態に与える影響を評価するとともに、メタ群集の維持に重要な海域を特定する。
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