2014 Fiscal Year Annual Research Report
液滴マイクロ流体システムを用いた膜内進化実験によるRNAの酵素能力の追求
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26891009
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
松村 茂祥 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 助教 (40619855)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 進化生物学 / 進化分子工学 / リボザイム / 人工細胞 / マイクロ流体システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近年発展の著しいマイクロ流路による液滴(エマルジョン)操作技術を用いて、触媒RNA(リボザイム)の「膜内進化システム」を構築し、RNAの触媒機能の限界を追求することを目的とする。これまでの研究では十分に追求されてこなかったRNAの「酵素」としての潜在能力を解放し、タンパク質酵素に匹敵する活性を持つリボザイムの創出を目指す。得られたリボザイムの解析により、RNAの機能と構造に関するより詳細な知見がもたらされると期待される。研究の過程で開発されるRNA進化マイクロ流路デバイスは、生体高分子進化のためのより汎用性の高い技術基盤となる。また、実験に用いるエマルジョン液滴は原始細胞様構造と見なすことができ、その中でリボザイムがどのように進化するかを観察することで、生命の起源、特にRNAワールド初期に細胞構造がRNA進化に果たした役割について、議論を深めることができる。 本研究において構築する上記、リボザイム膜内進化系の基盤となるのは、「リボザイムの膜内複製・発現システム」と、液滴を操作・解析・分取する「マイクロ流体システム」であり、本年度は両者の開発を行った。前者の「リボザイムの膜内複製・発現システム」については、代表者がこれまでに開発したリボザイムの複製・発現系を基に、いくつかの改良を行い、確立できた。後者の「マイクロ流体システム」については、代表者の前所属研究機関の協力の下、独自のシステムの構築を行い、概ね完成した。しかし、検出シグナル強度の問題が残っており、次年度は早急にその解決を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である「リボザイムの膜内進化系の構築」を達成するためには、「リボザイムの膜内複製・発現システム」と、液滴を操作する「マイクロ流体システム」の確立が必要である。 前者の「リボザイムの膜内複製・発現システム」については、代表者がこれまでに開発したVSリボザイムの複製・発現系を基にいくつかの改良(反応系のRNA・その他の成分の濃度等の最適化)を行い、その確立は完了した。また、膜内進化を他のリボザイムにも適用するため、自己スプライシング活性をもつグループIリボザイムの解析も行った。 後者の「マイクロ流体システム」については、市販の研究設備を購入して行える実験ではないため、専用のシステムを自前で構築しなければならない。そこで、代表者の前所属研究機関(フランスESPCI ParisTech)の協力の下、いくつかの改良を加えた独自のシステムの構築を行った。具体的には、蛍光色素を励起するレーザーの波長や本数、蛍光検出用の光学フィルターの波長域等について、本研究に最適化させた改良を行った。また、液滴の生成・恒温・選択を1チップで行う「統合」デバイスの開発も行った。 装置の構築は概ね完了し、膜内のリボザイム反応により生じる蛍光を検出できることを確認したため、本研究計画はほぼ予定通りに進行していると判断できる。しかし、現状ではシグナルの強度が弱く、かつバックグラウンドノイズが大きいため、S/N比が当初の想定に達していない。次年度は早急にこの問題の解決を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、「リボザイムの膜内複製・発現システム」は完成し、「マイクロ流体システム」の構築も概ね完了したと言える。しかし、検出シグナルのS/N比の改善という課題が残っているため、まずはその解決を行う。この問題は、検出部の光学系(光学フィルターおよび光電子増倍管)に起因していることがすでに判明しているため、装置内の各分光ミラーの調整や、システム内部への散乱光・外部光の侵入を防ぐ工夫をすることで、早期に解決・最適化できるものと考えている。 次に、すでに開発済みの「統合」マイクロ流体デバイスを用い、VSリボザイムの膜内進化実験を行う。その際、統合デバイスの遅延流路の長さを変えることで反応時間を短くし、進化淘汰圧を漸次増大させる。必要に応じて淘汰をかけないRNA複製反応を行い、リボザイムに追加の変異導入を行う。 さらに、進化実験の結果得られたリボザイムを単離し、進化させたリボザイムの特性、具体的にはその配列・活性・構造を解析する。野生型に対する活性向上が見られれば、より詳細に生化学的特性(反応速度、構造等)を解析する。仮に進化実験の結果が良好でない場合は、条件を変えて再度進化実験を行う。リボザイム分子集団の多様性等も解析し、「膜内」進化がどのような効果を持つかという視点も含めて総括し、論文として公表する。
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[Presentation] 細胞構造と群淘汰がもたらす遺伝情報の進化的安定性と多様性2014
Author(s)
松村 茂祥, Coldren, F. M., Kun, A., Nghe, P., Jossinet, F., Szathmary, E., Griffiths, A. D., Ryckelynck, M.
Organizer
第37回日本分子生物学会年会
Place of Presentation
パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
Year and Date
2014-11-25
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[Presentation] Evolutionary stability and diversity of genetic information established by cellularity and cell-based selection2014
Author(s)
Matsumura, S., Coldren, F., Kun, A., Nghe, P., Jossinet, F., Szathmary, E., Griffiths, A., Ryckelynck, M.
Organizer
ISNAC 2014, The 41st International Symposium on Nucleic Acids Chemistry
Place of Presentation
北九州国際会議場(福岡県北九州市)
Year and Date
2014-11-06
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[Presentation] Empirical investigation of importance of cellularity in the RNA world evolution using droplet-based microfluidics2014
Author(s)
Matsumura, S., Coldren, F., Kun, A., Nghe, P., Jossinet, F., Szathmary, E., Griffiths, A., Ryckelynck, M.
Organizer
DNA20, The 20th International Conference on DNA Computing and Molecular Programming
Place of Presentation
京都大学医学部芝蘭会館(京都府京都市)
Year and Date
2014-09-25
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