2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26891021
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
菅 裕 県立広島大学, 生命環境学部, 准教授 (30734107)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 多細胞体制の進化 / 単細胞ホロゾア / 遺伝子導入 / カドヘリン / Notch / カプサスポラ / クレオリマックス / コラロキトリウム |
Outline of Annual Research Achievements |
動物の多細胞体制の進化・起源を分子レベルで解明するためには、動物に近縁ではあるが単細胞の生活環を持つ「単細胞ホロゾア」の解析が重要な鍵をにぎる。 まず、単細胞ホロゾアの一種カプサスポラからカドヘリン様遺伝子をクローニングし、発現ベクターに組み込んだ。これをカプサスポラに導入し、タンパク質の局在と過剰発現系の表現型を見るなど、機能解析を行った。また同じくカプサスポラから、Notch様遺伝子2種類のうち一つをクローニングし、同様に機能解析を進めた。 更に、カプサスポラとは独立した別系統の単細胞ホロゾアであるコラロキトリウムの解析を行った。顕微鏡下で詳細に観察することにより、コラロキトリウムは以前考えられていたよりも複雑な形態や増殖サイクルを持つことが分かった。 単細胞生物の遺伝子機能を詳細に解析するには細胞内分子マーカーが必要である。そこでミトコンドリアを初めとする細胞内小器官に特異的に発現すると考えられる遺伝子を単細胞ホロゾアから多数クローニングし、その発現を調べた。その結果、カプサスポラの仮足への特異的マーカーを開発することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、本支援により、研究に必要な機器の多くを調達できた。すなわち、「研究活動スタート支援」の大きなポイントである、独立した研究室をセットアップするという目標については、ほぼ達成できた。 しかしながら、1年目の目標に掲げた、カプサスポラのカドヘリンやクレオリマックスのチロシンキナーゼの機能解析に関しては、必要なコンストラクトを作成することは出来たものの、それらを細胞に導入するステップで問題が発生した(「今後研究の推進方策」参照)。そこで初年度は、この問題を解決することに注力しつつ、元の計画になかった遺伝子の機能解析を平行して進めた。そのうちの一つがカプサスポラのNotch様遺伝子である。更に、2年目の計画(モデル生物としてのコラロキトリウムの確立)を前倒しでスタートさせた。
すなわち、個々の解析に遅れている部分と進んでいる部分はあるものの、全体としての進捗はおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在研究を進める上で最大の障壁となっているのは、細胞の形質転換効率の低さである。初年度当初は順調であったものの、徐々に効率が低下している。この改善のため、今後は海外の他研究室と密に連携する。すなわち、所属の学生を派遣し、実地でトラブルシューティングを行う。派遣先の研究室ではおおむね順調に形質転換が行われており、メールや電話では伝わりづらいトリックを学べるものと考える。 本研究の解析対象の遺伝子には、イントロンを多数持つ大きな遺伝子が多く、クローニングにはある程度の技術が必要である。初年度は、実験の主たる施行者である学生の技術的な問題もあり、想定したよりも多くの時間がかかった。2年目はその問題が解消され、コンストラクト構築を迅速化できる。 2年目の計画のひとつであるアメービディウムの遺伝子機能解析には、信頼性の高いゲノム塩基配列が必須であるが、残念ながら現時点では、アメービディウムゲノムのアセンブリの質は大変低い(N50:値1.2kb)。これはアメービディウムのゲノムに繰り返し配列が非常に多く、リードのペアリング情報が十分に活用されないことによる。そこで、第三世代シーケンサー(超ロングリード)による配列決定とゲノムアセンブリを目指す。そのため、外部のシーケンスセンター等との共同研究制度を積極的に活用する。
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