2014 Fiscal Year Annual Research Report
回転-分泌相関の可視化による細菌Ⅲ型分泌装置のエフェクター分泌機構の解明
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26891024
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
扇田 隆司 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (80737263)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 細菌Ⅲ型分泌装置 / エフェクター分泌 / 蛍光標識エフェクター / 金ナノロッド / 回転運動観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「細菌Ⅲ型分泌装置(T3SA)がニードル内側にある疎水性螺旋と逆方向に回転することで、エフェクタータンパク質を分泌する」という仮説の検証を目的とする。このためにT3SAの回転とエフェクター分泌を同時に可視化し、種々条件での両者の相関を定量解析する。当該年度は緑膿菌をモデルに、(1) エフェクター分泌可視化系と(2) T3SA回転速度評価系の構築を試みた。 (1)では、エフェクター(ExoT)にGFPを融合させ、GFP蛍光を銀ナノ粒子で増強することで分泌のリアルタイム・高感度な検出を試みた。その結果、緑膿菌内でExoT-GFPを発現させた後、分泌を誘導してもExoT-GFPが菌体内に留まり、菌体外に分泌されないことを見出した。これは近年サルモネラ属細菌で報告された結果と一致しており[Radics J他, Nat. Struct. Mol. Biol.(2014)]、緑膿菌の場合にもGFPのようなアンフォールド困難なタンパク質を融合させるとエフェクター分泌が阻害されることが示唆された。この知見から、分泌の可視化にはサイズが小さく、硬い構造をとらない蛍光タグを用いる必要があるとわかった。 (2)では、異方性の金ナノロッドをT3SA特異的に結合させ、その動きを暗視野顕微鏡で観察することでT3SA回転の検出を試みた。しかし、暗視野観察では金ナノロッドと緑膿菌が区別できず、回転運動の検出は困難であった。このことから、金ナノロッドの異方性を利用して回転を検出するには、金ナノロッドを蛍光分子で修飾し、蛍光顕微鏡で特異的に観察する必要があると示唆された。 以上、当該年度の研究で、目的とする実験系を構築する上で解決すべき点が明らかとなり、本研究を進める上で重要な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では当該年度中にエフェクター分泌可視化系を構築し、その後、金ナノロッドを用いた回転運動評価系の構築を進めていく予定であった。しかし、現時点でエフェクター分泌評価系が完成しておらず、研究の進捗はやや遅れている。 計画ではエフェクタータンパク質にGFPを融合させることで分泌を検出する予定であったが、実験の結果、GFP融合エフェクターはNativeなエフェクターと異なり、Ⅲ型分泌されなかった。そのため、計画を変更して他の方法でエフェクター分泌を評価する必要性が生じたので、当初計画よりもエフェクター分泌評価系の構築に要する期間の延長が必要となった。 上記の遅れを取り戻すため、当初計画と一部変更し、回転速度評価系の構築も同時進行で進めている。回転運動の観察については、まだ実験系は完成していないものの、ストレプトアビジンコート金ナノロッドは構築できており、現在、蛍光標識金ナノロッドの構築を進めていることから、おおむね計画通りに進行している 以上の状況から、当初研究目的の達成度としてはやや遅れてはいるものの、翌年度中に当初目標を達成することは可能であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はH27. 9月を目途に(1)エフェクター分泌可視化系と(2)回転速度評価系の構築を進める。その後、両実験系を組み合わせた(3)回転-分泌相関評価系を構築し、(4)種々条件で回転-分泌相関を評価する。 (1), (2)では、両者を同時進行するとともに、すでに論文で報告されている方法を積極的に用いることで、系の構築に要する時間の短縮を試みる。これにより、H27年度中の研究目標の達成を試みる。 (1)では、エフェクター分泌の可視化にはサイズが小さくて硬い構造をとらない蛍光タグをエフェクターに修飾する必要があることがこれまでに示唆された。そこで、この条件を満たすTetra-cysteine(TC)タグをエフェクター(ExoT)に修飾することにした。化合物FlAsH-EDT2はTCタグと結合するとEDT2が外れて蛍光を発する。そのため、FlAsH-EDT2を添加することで、TCタグはGFPと同様の蛍光プローブとして振る舞う。TCタグは6アミノ酸の小ペプチドであり、それ自体は構造をとらない。また、サルモネラ属菌で、エフェクターにTCタグを修飾しても分泌が起こることも報告されている[Van Engelenburg SB他, Chem Biol(2008)]。したがって、GFPの代わりにTCタグを用いれば、分泌可視化系の構築は可能と思われる。 (2)では、金ナノロッド表面に量子ドットを修飾し、異方性の蛍光プローブを作製する。これをT3SA特異的に結合させることで回転速度評価系を構築する。金ナノロッドへの量子ドット修飾はすでに報告されている方法で行う[Xin Li他, Optics express(2010)]。また、T3SA特異的なプローブの修飾法はすでに確立している[Ohgita他, FASEB J (2013)]。 以上のように研究を推進することで、H27年度中の研究目標達成を試みる。
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