2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26891026
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
小川 浩太 基礎生物学研究所, 生物機能解析センター, 研究員 (40733960)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 染色体放出 / 遺伝子発現局在 / エピジェネティクス / ヒストン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、アブラムシが環境依存的に染色体分配様式を変化させ、表現型の異なる仔虫を産み分ける新奇の発生制御機構に着目している。「アブラムシの系統で特異的に獲得された遺伝子」と「X染色体を区別するエピジェネティックな機構」が、アブラムシの環境依存的な染色体分配機構の改変に重要であるという仮説に基づき、アブラムシが単為生殖で仔虫を産み分ける至近メカニズムとその進化的背景の解明を目的として研究を展開している。
本年度はトランスクリプトーム解析によって、産み分け機構への関与が示唆された遺伝子群の発現動態をin situ ハイブリダイゼーションにより精査した。解析は胚腺(卵巣の一部で先行研究から産み分けに重要な役割を担っていると考えられる器官)に着目した。その結果、オス産出時とメス産出時における遺伝子の発現差異は小さいことが分かった。これは少数の遺伝子のわずかな発現差異によって産み分けが制御されていること、そして遺伝子発現のみならずエピジェネティックな機構によって制御されている可能性を示唆している。
胚腺ではhistone-lysine n-methyltransferasが高発現しており、ヒストンのメチル化が産み分けに寄与している可能性が高い。そこで今後は、H3K4,H3K9のモノ・ジ・トリメチル化抗体を使用して、オス産出時・メス産出時のX染色体のメチル化の状態に着目して解析を進める。また、Crisper/Cas9によるゲノム編集により遺伝子ノックダウンを行う。さらに染色体の塩基配列を同定し、情報科学的にX染色体の構造を解析し、環境依存的な染色体放出の制御に関与すると思われるモチーフ等を探索する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
in situハイブリダイゼーションによる解析はほぼ完了し、アブラムシの遺伝子機能解析の為にCrisper/Cas9によるゲノム編集実験系の立ち上げにも取り掛かっている。また、来年度の研究に必要なサンプルや抗体の準備も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
H3K4,H3K9のモノ・ジ・トリメチル化抗体を使用して、オス産出時・メス産出時のX染色体のメチル化の状態に着目して解析を進める。さらに染色体の塩基配列を同定し、情報科学的にX染色体の構造を解析し、環境依存的な染色体放出の制御に関与すると思われるモチーフ等を探索する。
遺伝子の機能解析に関しては、当初はRNA干渉法による遺伝子ノックダウンを行う予定であったが、本研究の対象種であるエンドウヒゲナガアブラムシではうまく機能しない。そこで、Crisper/Cas9によるゲノム編集法を用いた遺伝子ノックダウンにより遺伝子の機能解析を試みる。
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