2014 Fiscal Year Annual Research Report
植物細胞を用いたゴルジ体層板構造の形成・維持機構とその生理学的意義の解明
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26891028
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
伊藤 容子 独立行政法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 特別研究員 (10733016)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | ゴルジ体 / 膜交通 / 植物 / ライブイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
ゴルジ体は、真核生物の細胞内輸送経路において中心的な役割を果たすオルガネラであり、非常に特徴的な層板構造をとることで知られているが、この構造がどのようにして形成・維持されているのか、またこの構造にどのような意義があるのかは、ほとんど明らかになっていない。研究代表者は、これまでの研究から、タバコ培養細胞で薬剤処理によってゴルジ体-小胞体間の輸送を阻害した際、層板構造の中でも最もシス側の槽に局在するタンパク質が未知のドット状の構造体に局在し、この構造がゴルジ体の形成に重要であることを示唆する結果を得てきた。当該年度には、薬剤処理後に薬剤を除いてゴルジ体を再形成させた際のゴルジ体マーカーの挙動について、所属研究室で開発された超解像ライブイメージング顕微鏡SCLIMを用いて、4Dで詳細に観察する条件の検討を行った。その結果、トランス側のマーカーが、最もシス側のマーカーと一部重なりながらも、複雑にドメイン化した構造に局在して運ばれる様子を捉えつつある。また、薬剤処理を介さないゴルジ体新規形成メカニズムも明らかにしたいと考えた。そのためにはまず、ゴルジ体層板構造の数がいつ増加するのかを調べる必要があると考え、長時間の4D観察を行い、細胞周期に伴うゴルジ体数の推移を解析した。その結果、植物細胞のゴルジ体数の変化を、ライブイメージングによって初めて明らかにした。さらに、ゴルジ体層板構造の形成に関わる分子基盤を明らかにするため、分子遺伝学的解析に適したシロイヌナズナにおける実験系の確立を目指した。様々なマーカーによってゴルジ体を可視化したシロイヌナズナ株の作製を行い、シス槽・トランス槽それぞれ単独で観察した際には、これまでタバコで観察されたのと同様のゴルジ体の挙動が見られることを確かめた。さらに複数のゴルジ槽や関連したオルガネラを多色で同時に観察できる株の作製を進め、観察に移っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
薬剤処理後のゴルジ体再形成の超解像4Dイメージングについては、シス槽マーカー、トランス槽マーカーがそれぞれドメイン化しながら複雑に混ざり合った様子が観察されつつあり、観察条件の探索はおおむね順調であると言える。細胞周期の進行に伴うゴルジ体数の変化についても、先行研究では電子顕微鏡が用いられており、報告によって結果がまちまちであったのに対し、同じ細胞を3Dライブイメージングにより長時間追い、結果を得ることに成功した。3D画像中のドットの解析のためのImageJプラグインの開発も共同研究として進めており、多量のデータの解析が可能になることで、さらに多くの情報が得られると期待される。 シロイヌナズナを用いた生化学的解析については当初の計画よりやや遅れているが、マーカーの多色化とタイムラプス観察は現在結果が得られつつあり、間もなく次のステップへ進めると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
薬剤処理後のゴルジ体層板構造再形成について、他のゴルジ体マーカーや積荷タンパク質についてもSCLIMによる観察を進める。最大5色の蛍光タンパク質を同時に分光可能であるSCLIMの特長を活かし、3色目のマーカーの導入を行い、さらに複雑なコンパートメント間のやりとりについても可視化したいと考えている。デコンボリューション処理による3次元立体構築を行うことで超解像4Dイメージを得、そのデータを解析することで、層板構造の再形成時における小胞体-ゴルジ体間、またゴルジ体内輸送のダイナミクスを明らかにする。また、細胞周期のどの段階でゴルジ体の数が増えるのかを突き止めることに成功したので、次にこのステージの細胞を集中的に観察し、ゴルジ体が新しく形成される様子を捉える。これについても様々なゴルジ体マーカーや積荷タンパク質を用い、ゴルジ体新生と輸送の関係に迫る。 並行して、多色化が完了しつつあるゴルジ体可視化シロイヌナズナ株において、タバコ培養細胞と同様のゴルジ体マーカーの挙動が観察されることを確認した上で、最もシス側の槽のタンパク質が局在する未知のドット状の構造体を生化学的に単離する。ここに局在しているタンパク質を質量分析解析によって同定し、ゴルジ体層板構造の形成・維持に関わる因子の候補を得る。この候補因子について、ライブイメージングや免疫電子顕微鏡観察によって、細胞内局在の解析を行う。さらに、T-DNA挿入変異体の表現形を解析することで、ゴルジ体層板構造形成・維持における候補因子の機能を明らかにする。
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Research Products
(3 results)