2014 Fiscal Year Annual Research Report
プロテオーム解析に基づく低温条件での樹木の低温脱馴化機構の解明
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26892002
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
春日 純 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (40451421)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 低温脱馴化 / 樹木 / タンパク質 / 深過冷却 / 細胞外凍結 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、早春期のシラカンバの低温脱馴化の初期過程を明らかにするために、それぞれの組織を構成する生細胞が異なる凍結適応機構を示す樹皮と木部について、冬季に採取した試料を氷点下温度から摂氏数度という低温域で処理したときに起こる可溶性タンパク質および細胞膜タンパク質におけるプロテオーム変動を明らかにすることを目的とする。 平成26年度は、シラカンバの枝からの可溶性タンパク質画分および細胞膜タンパク質画分の調製方法の検討を行った。可溶性タンパク質画分は、液体窒素で凍結して粉砕した各組織をトリス‐塩酸バッファー中でホモジェナイズし、超遠心機等により不溶性の成分を除去することで調製することとした。細胞膜タンパク質画分は、採取した試料を液体窒素で凍結せずにホモジェナイズを行い、遠心分離により調整したミクロソーム画分からポリエチレングリコール-デキストラン水性二層分配法により精製することとした。本手法を用いて調製した細胞膜タンパク質画分についてP型ATPアーゼやV型ATPアーゼ、NADH cyt cレダクターゼなどのマーカー酵素の活性をもとに細胞膜画分の純度を評価したところ、高い純度を持つ細胞膜画分であることが確認できた。 また、帯広畜産大学のキャンパスで2月初旬にシラカンバの枝を十分量採取し、-20℃のフリーザーの中で、強制休眠を維持させたまま保存した。現在は、-20℃で保存した冬季に採取した枝を適宜取出し、-15、-10、-5、-2、0、+2、+4℃といった温度に設定した恒温チャンバーを用いて、暗黒下で温度処理を12、24、48および72時間行った枝の樹皮と木部から可溶性タンパク質画分を調製し、SDS-PAGEにより比較することで両組織に含まれる可溶性タンパク質に脱馴化による変動が見られる条件の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
試料調整に必要なホモジェナイザの導入が遅延し、当初の研究計画に比べて若干の遅れが生じた。可溶性タンパク質画分および細胞膜タンパク質画分の調製方法の検討は終了したものの、平成26年度中に終了予定であった低温脱馴化の処理温度および時間によるSDS-PAGEおよび二次元電気泳動法によるタンパク質組成変化の比較は現在進めている。これまでの研究の遅れは大きなものではなく、申請の研究内容は予定通り平成27年度中に終了すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はこれまでに若干の遅れを生じたが、平成27年度の研究は、基本的に当初の計画に沿って推進する。ただ、申請書作成時には、可溶性タンパク質と細胞膜タンパク質の解析を並行して行う予定であったが、実験手順が煩雑になるため、まず、可溶性タンパク質画分の解析を終わらせた後に、細胞膜画分の解析を進めることにする。 平成27年度の予算において、植物細胞の凍結抵抗性試験のための小型環境試験器の購入を予定していた。しかし、消耗品費や旅費を考慮するとその購入が難しいため、代替として小型のディープフリーザを購入し、これと発泡スチロールボックスなどの保温容器を用いて、試料を冷却する装置を作成する。申請者は以前、自作した同様の装置によって植物細胞の凍結抵抗性を評価した。本装置では、精密な温度コントロールはできないが、大まかに細胞の凍結抵抗性を評価することができる。精密な温度コントロールが必要とされる際は、北海道大学大学院農学研究院においてプログラムフリーザーを借り受けることにする。
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Research Products
(1 results)