2014 Fiscal Year Annual Research Report
地域内食料産業連関の再構築に向けたフードシステム的研究
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26892005
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
則藤 孝志 福島大学, 経済経営学類, 特任准教授 (80739368)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 原子力災害 / フードシステム / ローカルフードシステム / 食農連携 / 協同組合間連携 / 地域内産業連関 / 地域づくり / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
原子力災害地域において今後豊かな地域経済を築いていくためには、基幹産業の1つである農業の再生に加えて、農業と食品産業(食品製造業、食品流通業、飲食業)、関連部門(観光、医療・福祉、教育など)とのつながりを地域内で取り戻し、強化していくこと、すなわち食と農の地域内産業連関の再構築が極めて重要になると考える。 本研究では、食と農で地域をつなぐ食農連携の取り組みに着目し、震災・原子力災害を乗り越えた取り組みや新たなに生まれている取り組みにおけるそれぞれの地域的展開、すなわち、原料調達を通じた川上(農業)とのつながり、製品販売を通じた川下(小売・飲食業、関連部門)とのつながりをめぐる地域動態を解明することで、原子力災害からの地域内食料産業連関の再構築に向けた確かな方向性を示すことを目的としている。 1年目に当たる2014年度は、第1に、福島県における食農連携の展開状況を広く把握するために、体系的な調査枠組みを設計し、それに沿って数多くの取り組みの現場を調査した。具体的には、①地域6次産業化、②地元に根ざした中小食品メーカー、③食と農をつなぐ流通業者、④行政・関連団体という4つの調査対象を設定し、それぞれに特徴的な取り組みを複数事例調査しながら、食と農の地域内食料産業連関の損害構造と食農連携の回復・萌芽状況を広く把握した。 第2に、食農連携の継続・発展を支える要素や仕組みについて研究を深めた。具体的には、1998年の発足以降、大豆の地産地消を発展させてきた「ふくしま大豆の会」を取り上げ、農協と生協、民間企業による連携の仕組み、買い食べ支える取引の仕組み、取り組みの発展過程や原子力災害後の苦難や対応などについて詳しく調査し、継続・発展的な食農連携モデルとしての協同組合間連携を提起した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1に、本年度の主な実施事項として、食と農の地域内食料産業連関の損害構造と食農連携の回復・萌芽状況を広く把握ことが計画されていたが、そこでは①地域6次産業化、②地元に根ざした中小食品メーカー、③食と農をつなぐ流通業者、④行政・関連団体という4つの調査対象を設定して、体系的に食農連携の現場を見て回ることができた。調査数も計画していた以上を確保することができた。一方、その内容を総説としてまとめ何らかの形で社会に公表するところまでは至っておらず、次年度の第1の取り組み課題となる。 第2に、「ふくしま大豆の会」から考える継続・発展的な食農連携モデルについては、学会報告(日本協同組合学会、2014年10月)から論文投稿(『商学論集』[福島大学経済学会])まで行うことができたことは計画以上の成果として評価できる。 以上、研究は概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる次年度(2015年度)は、本研究課題の目標である、地域内食料産業連関の再構築モデルの提示をめざし、調査研究を進めていく。本年度に実施した福島県の食農連携の実態調査からは、取り組みの継続・発展を支える要素として、①地域づくり、経営理念、③協同組合、④行政支援、⑤技術革新を見出すことができた。次の課題は、それぞれの要素がどのように結びついて一つの仕組みとして成り立っているのかというところを解明していくことである。それが本研究の目標である地域内食料産業連関の再構築モデルや食農連携の継続・発展モデルにつながると考えられる。 上記の目標をめざし、本年度に実施した「ふくしま大豆の会」への調査のような集中的な調査をいくつか行う。そこでは、継続的な調査と詳細なデータを用いて、食農連携の継続・発展メカニズムを深める地域実証研究を実施する。 さらに、本研究は震災復興への貢献を超えて、日本の地方都市・農山村の内発的な地域づくりに有意義な知見をもたらすことも意図している。そこで上記の調査研究で得られた知見を、食と農の地域経済振興というより大きなテーマに位置づけ、学術的な貢献を明確にしていく。
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