2014 Fiscal Year Annual Research Report
新規TA system、YjhXQの生理機能およびトポイソメラーゼI阻害機構
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26892025
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山口 良弘 大阪市立大学, 複合先端研究機構, 特任准教授(テニュアトラック) (00737009)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 応用微生物学 / 酵素学 / 遺伝子工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
私は、大腸菌において新規の TA system, YjhX-YjhQ system を同定した。本研究では、(1) YjhX toxin の標的を同定、(2) YjhX の標的に対する作用機構、(3) YjhQ antitoxin によるYjhX 毒性中和機構、及び (4) yjhX-yjhQ 欠損株を作成して生理的役割を解明し、原核生物におけるアポトーシスに係る TA system の役割の一端を明らかにすることを目的とした。本年度は予定通りに以下の実験を実施した。”YjhX の標的同定” YjhXが負の超らせん構造を巻き戻す Topoisomerase I (TopA) 活性を阻害する toxin であることを in vivo の実験で見出した。"YjhQ による YjhX 毒性の中和機構の解明" YjhQ antitoxin は従来の TA systemと同様に YjhX と複合体を形成することでその毒性を中和していることを明らかにした。"YjhX による TopA 活性阻害機構の解明" 無細胞系での YjhX による TopA 活性阻害測定系を、負の超らせんを持つ pUC19 plasmid を基質として確立した。確立した系を用いて、YjhX は TopA を得意的に阻害することを証明し、YjhX が新規の toxin であることを明らかにした。”YjhX-TopA 相互作用解析” Pull-down assay により、PrS-YjhX と TopA 間の相互作用を確認した。その結果、YjhX は TopA-DNA 複合体に結合することが示された。"YjhX によるトポイソメラーゼ I ヌクレアーゼ活性阻害" YjhX による TopA 活性の阻害が DNA 弛緩のために重要な TopA の一本鎖 DNA 切断活性の阻害に起因するものかどうか解析した。その結果、YjhX はTopA の一本鎖 DNA 切断活性を阻害しないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は申請時に計画した5つの実験をすべて終了し、来年度(27年度)の予定を前倒して実施できた。欠損株の作成は幾つかの異なる大腸菌の yjhX-yjhQ 欠損株をすでに作成済みであり、また、YjhX-TopA の相互作用の詳細な解析についても必要なタンパク質はすべて精製を終了しタンパク質標品を得ている。平成27年度の実験に必要な材料の準備をすべて26年度に終えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の研究計画に変更はない。これまでどおり粛々と実験を行い、得られた結果を発表する予定である。結晶構造解析については外部研究者と話し合いを続けている。27年度は以下の実験を予定している。 YjhX-TopA 相互作用の詳細解析 TopA タンパク質は DNA 結合部位を持つ C-末端ドメイン (14 kDa) と活性中心を持つ N-末端ドメイン (64 kDa) の2つから構成されている。TopA のドメインを決定するために、 pull-down assay 系を用いて、YjhX 結合ドメインを決定する。もし時間が許せば、YjhX-TopA または YjhX-TopA-DNA 複合体の結晶構造解析を行う。YjhX-TopA 構造解析について現在外部研究者と話し合いを進めている。 Persister 形成における YjhXの役割 YjhX は TopA 活性を阻害することで生育を阻害し、persister 状態を誘導する可能性が示唆される。この休眠状態では菌は抗生物質による致死効果を回避することができる。よって、YjhX が TopA を阻害することで休眠状態を誘導するために重要な役割を果たしている可能性がある。私は yjhXyjhQ 欠損株を作成し、生育、形態変化、および persister 形成を抗生物質添加後の生菌数を測定することで解析する。菌体を異なる濃度の抗生物質で処理した後経時的にサンプルを採取し、生菌数を測定する。さらに、TopA 発現プラスミドを野生株および欠損株に導入し、その後上記の実験を行う。この仮説が証明されれば、TopA の新規機能発見であり、病原菌の persister 形成による多剤薬剤耐性機構に新たな知見が得られる。
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