2014 Fiscal Year Annual Research Report
神経栄養因子シグナルを用いた下行性抑制系の強化による新規慢性痛治療法の開発
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26893032
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
須藤 貴史 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (60739621)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 慢性痛 / 神経障害性疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)TrkB作動薬は神経障害性疼痛モデルの内因性鎮痛機構を再活性化する可能性がある。神経障害性疼痛の動物モデルでは神経障害後慢性期(術後6週)にカプサイシンによる痛み刺激により誘発される内因性鎮痛機構の減弱が見られた。一方で、神経栄養因子受容体のひとつであるBDNF受容体の作動薬である7,8-Dihydroxyflavone(7,8-DHF)による処置(5mg/kg皮下投与)を術後6週から5日間行ったところ、Vehicle処置群と比較して有意に内因性鎮痛が増強した。 2)TrkB作動薬はノルアドレナリン、セロトニンを介する鎮痛を増強する可能性がある。上記処置を行ったラットにノルアドレナリン、セロトニン再取り込み阻害薬であるデュロキセチン(10mg/kg腹腔内投与)を投与し、1時間後にvon Frey Filamentにより足底のHypersensitivityを測定したところ、7,8-DHF処置群ではデュロキセチンの鎮痛効果が増強した。 3)正常動物においてはTrkB作動薬処置は内因性鎮痛機構に影響を与えなかった。また、脊髄後角におけるDopamine Beta Hydroxylaseの免疫染色像にも影響を与えなかった。 以上本年度の研究から、7,8-DHFによる処置は慢性痛患者で減弱していると考えられている内因性鎮痛機構を正常化する可能性がある。また、従来の治療で十分な鎮痛が得られない患者も7,8-DHF処置により現行の鎮痛薬でも良好な鎮痛が得られる可能性が示唆された。正常動物の疼痛行動には影響がなかったが、副作用の検索という意味合いでは、他の脳神経系機能についてはさらなる検討が必要と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経障害性疼痛慢性期からのTrkB作動薬処置の実験を優先して開始したため、当初の計画であるTrkB作動薬が神経障害性疼痛のHypersensitivityに対して予防的に働くか否かの検討は一部達成されていないが、TrkB作動薬の慢性痛に対する作用について新たな知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はTrkB作動薬が、神経障害性疼痛モデルにおける内因性鎮痛機構に与える影響を優先して検討した。そのなかで、神経障害後の慢性期にカプサイシンにより惹起される内因性鎮痛機構が減弱することが明らかになった。また、TrkB作動薬が減弱した内因性鎮痛機構を再活性化する可能性が示された。今後は神経障害後慢性期にTrkB処置を行った個体でマイクロダイアライシスを行う。カプサイシンによる痛い刺激を行った時、脊髄後核のノルアドレナリン濃度がどのように変化するか検討する。 また、TrkB作動薬による処置を神経障害直後から行い、疼痛閾値及び内因性鎮痛に及ぼす影響も検討する。また、神経障害性疼痛モデルにおける免疫染色を当初の計画通り予定する。
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