2014 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子変異に基づいた肝細胞癌におけるクロマチン構造の網羅的解析
Project/Area Number |
26893045
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 玲匡 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40735396)
|
Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
Keywords | 肝細胞癌 / FAIRE / クロマチン / ARID |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の解析結果から,肝細胞癌の発生・進展過程では,他の癌腫同様にゲノム変化だけでなくエピゲノム変化も多数蓄積していることがわかっている.我々は,エピゲノム変化の一つとして,クロマチン構造の変化に注目し,その網羅的解析手段として,FAIRE-seq (Formaldehyde-Assisted Isolation of Regulatory Elements followed by next generation sequencing) を試みた.まず,凍結組織検体の組織粉砕およびホルマリン固定のステップを最適化することで,in vivo FAIRE-seq法の確立に成功した. そして,肝癌凍結手術検体の癌・非癌部におけるヌクレオソーム・フリー領域の分布をゲノムワイドに同定し,癌部.非癌部に特異的なヌクレオソーム・フリー領域があること確認した.さらに,肝細胞癌の主要なドライバー遺伝子異常(CTNNB1,TP53,ARID1A/2)に基づく,ゲノムワイドなヌクレオソーム・フリー領域の同定を試みた.これまでに,主要なドライバー遺伝子異常症例のFAIRE-seqに成功し,現在その癌部.非癌部に特異的なヌクレオソーム・フリー領域の同定を行っている. なお,上記研究と並行して,主要なドライバー遺伝子の蛋白発現変化に伴う臨床病理学的特徴を組織マイクロアレイを用いて探索し,その結果を英文報告している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,肝細胞癌における主要なドライバー遺伝子異常症例(CTNNB1,TP53,ARID1A/2)のFAIRE-seqを行なった.凍結組織切片からFAIREによって抽出されたDNAを用いて,シーケンスライブラリーを作成した.次世代シーケンサーによって配列決定されたショートリードを,ヒトゲノムリファレンスにマッピングして,シーケンス配列のポジションを決定した. また,上記と並行して,組織アレイを用いた免疫組織化学的検討を行った.肝細胞癌切除290症例を用いて組織アレイを作成し,CTNNB1,TP53,ARID1Aの免疫染色を行った.特に,肝細胞癌多数症例での免疫組織化学的検討報告のないARID1Aに注目した.その結果,3.8%に発現消失が,17.9%に発現減弱が確認された.ARID1Aの発現減弱ないし消失症例は,CTNNB1およびTP53の核内集積と逆相関の関係にあった.この結果から,遺伝子変異レベルで相互排他的とされる事象が,タンパク発現レベルでも確認された.また,追加で行ったfull sectionの免疫組織化学的検討結果から,肝細胞癌における ARID1A 発現消失は発癌後の進展過程で生じる変化であることが示唆された.
|
Strategy for Future Research Activity |
計画通り,主要なドライバー遺伝子異常症例の癌部.非癌部に特異的なヌクレオソーム・フリー領域の同定を行う予定である.さらに,局在転写因子予想から転写因子による制御メカニズムを推測することを目的とする. 具体的には,マッピングにより得られたシーケンス配列(のヒトゲノム上での分布をMACSプログラムによって統計学的に検定し,P値<1e-5の領域を有意に濃縮した領域と判定する.また,濃縮の程度を表すP値は,IGB (Integrated Genome Viewer, Affymetrix)を用いて、ピークとして可視化する. このようにして抽出したヌクレオソーム・フリー領域を比較することで,癌・非癌部特異的なヌクレオソーム・フリー領域の同定する.その後,同領域のモチーフ解析を行なうことで,濃縮する特徴的な転写因子の認識配列を抽出する.なお,癌部と非癌部の配列セットをそれぞれ比較し,互いをバックグランド配列とする.この結果から予想される局在転写因子から,癌での転写制御ネットワークの変化を推測する.特に,ドライバー遺伝子異常(CTNNB1,TP53,ARID1A/2)に基づく転写メカニズムの違いを探求する.さらに,実際の転写因子の局在を確認するために,凍結組織を用いたChIP-seq(chromatin immunoprecipitation followed by next generation sequencing)も検討している.
|
Research Products
(2 results)
-
-
[Journal Article] Trans-ancestry mutational landscape of hepatocellular carcinoma genomes.2014
Author(s)
Totoki Y, Tatsuno K, Covington KR, Ueda H, Creighton CJ, Kato M, Tsuji S, Donehower LA, Slagle BL, Nakamura H, Yamamoto S, Shinbrot E, Hama N, Lehmkuhl M, Hosoda F, Arai Y, Walker K, Dahdouli M, Gotoh K, Nagae G, Gingras MC, Muzny DM, Ojima H, Shimada K, Midorikawa Y, Goss JA, Cotton R, Hayashi A, et al.
-
Journal Title
Nature Genetics
Volume: 46
Pages: 1267-73
DOI
Peer Reviewed