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2014 Fiscal Year Annual Research Report

ピロリ菌が分泌するエフェクター様RNAの探索と解析

Research Project

Project/Area Number 26893046
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

氣駕 恒太朗  東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (90738246)

Project Period (FY) 2014-08-29 – 2016-03-31
Keywordsピロリ菌 / RNA / 細菌感染 / 胃癌
Outline of Annual Research Achievements

ピロリ菌は、Cag Pathogenicity island(CagPAI)と呼ばれるゲノム領域がその病原性を司っていることが知られている。CagPAIは、Ⅳ型分泌装置と細胞空胞化毒素関連タンパク(CagA, cytotoxin-associated protein)をコードしており、Ⅳ型分泌装置を介したCagAの宿主への注入が、胃癌のリスク因子であることが明らかになってきている。本研究では、ピロリ菌の保有するRNAがⅣ型分泌装置によって輸送される新しいエフェクター分子になり得ることを予想し、ピロリ菌の持つRNAが病原性に関与している可能性を模索した。
我々は、ピロリ菌のRNAの網羅的発現解析を行い、CagPAIゲノム領域に存在するRNA(RNA-X)を同定した。RNA-Xは、LNAという人工核酸を用いたノーザンブロッティングとリアルタイムPCRにてその発現を確認した。さらに5'Raceと3'Race法を用いて、RNA-Xの転写開始点と終結点の同定に成功した。ジギトニン溶解法を用いた実験ではRNA-Xが宿主に分泌されるタイプのRNAでないことが分かったが、バイオインフォマティクスを駆使して二次構造予測、標的遺伝子予測を行ったところ、RNA-Xが安定的なヘアピンループ構造を取ること、さらにはRNA-Xがピロリ菌の病原性の発揮に重要な遺伝子を制御している可能性があることを見出した。
これらの結果から、ピロリ菌の病原性を司る領域に存在するRNA-Xは、ピロリ菌の病原性を何らかの形で制御していることが考えられた。この研究成果は、RNAを標的とした新たな抗菌や癌治療の標的を生み出すなど、今まで治療が困難であった疾病の抑制につながるのではないかと考えている。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究では、ピロリ菌の保有するRNAがⅣ型分泌装置によって輸送される新しいエフェクター分子になり得ることを予想し、ピロリ菌の持つRNAが病原性に関与している可能性を模索した。予備的なジギトニンを用いた実験において、菌由来のRNAの一部が宿主細胞に移行されていることが示唆されていたが、これは宿主細胞のRNAをアーティファクトとして検出していたことが分かった。その一方で、Ⅳ型分泌装置に関与するRNAを別の視点から探索し、Ⅳ型分泌装置をコードする領域に存在するノンコーディングRNAを新たに検出することに成功した。さらに、このRNA(RNA-X)は、ピロリ菌の病原性の発揮に重要な遺伝子を制御している可能性がバイオインフォマティクスの結果から示唆された。
RNA-Xは宿主に分泌されるタイプのRNAでは無かったものの、Ⅳ型分泌装置の機能に重要であり、ピロリ菌の病原性に関わるRNAであることが予想されたため、RNA-Xに焦点を当てて研究を継続している。既にRNA-Xの配列の同定は終了しており、27年度に行う予定であったRNA-Xの欠損株も作製済みである。27年度に行う予定であった標的遺伝子の同定に関しても取り掛かっており、予定通りにいかなかった点があったものの、おおむね順調に進んでいると考えている。

Strategy for Future Research Activity

今後の研究の方針としては、当初の計画通りに、RNA-Xがピロリ菌感染による病態形成に及ぼす影響の検討と、RNA-Xが標的とする分子の探索を行う予定である。変更する点は、RNA-Xは宿主に分泌されるタイプのRNAでなかったため、標的遺伝子の探索を宿主ではなく菌体内で行うところである。既に作製済みである、RNA-Xを欠損させたピロリ菌の網羅的遺伝子発現解析を、次世代シークエンサーを用いて行い、野生株と比較することで標的遺伝子を同定する予定である。RNA-Xの発現がin vitroの培養時に低く、標的遺伝子の評価がし難かった場合には、RNA-Xの強制発現株を作製することでその問題を解決する予定である。RNA-Xの標的遺伝子は、リアルタイムPCR法やウェスタンブロットを用いることで確認していく。
既に作製済みであるRNA-X欠損株は異常な増殖を示さず、野生株同様に発育したため、ピロリ菌におけるRNA-Xの機能はこの欠損株を用いて解析することが出来ると考えられる。RNA-X欠損株を胃上皮由来の細胞株に感染させ、炎症性サイトカインの応答を見ることで、ピロリ菌の感染におけるRNA-Xの意義を考察する予定である。また、RNA-XはⅣ型分泌装置に影響を与えていることが示唆されたため、Ⅳ型分泌装置によるCagAタンパク質の注入に関与していないか精査する。

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Published: 2016-06-01  

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