2014 Fiscal Year Annual Research Report
化合物ライブラリーを用いたExocytosisアッセイによる新規降圧利尿薬の開発
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26893064
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
野村 尚弘 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (50735800)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 高血圧 / 尿崩症 / 水・電解質輸送 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) EGFRシグナル伝達経路と水電解質輸送体の細胞内輸送との関わりの解明 本研究の背景となる、研究代表者野村尚弘が前研究室で行ったssYFP exocytosis assayを用いたAQP2のchemical スクリーニングに関する論文がPublishされた(Am J Physiol Cell Physiol. 2014 Oct 1;307(7):C597-605.)。この論文の結果として得られたAG-490がEGFR阻害剤ということから、その他のEGFR阻害剤も同様の効果があるかを検討した。MEK阻害剤およびその下流のMEK阻害剤もLLPCK1細胞においてAQP2のexocytosisを亢進し、細胞膜表面におけるAQP2の発現を増加させることが確認できた。同阻害剤はAQP2のexocytosisを増やす作用のみならず、endocytosisを抑制する作用も持つことがあきらかとなった。さらに、リチウム誘発性尿崩症モデルラットにすでに臨床で使用可能となっているEGFR阻害剤のErlotinibを経口投与することで、腎集合管管腔側のAQP2の発現量を増加させ、わずかではあるが尿量減少、尿浸透圧亢進の効果を認めることができた。 2) ケミカルスクリーニングで得られたexocytosis抑制剤候補の検討 AQP2安定発現LLCPK1細胞を用いて免疫染色を行いAQP2の細胞膜上の発現量の変化を観察した。スクリーニングで得られたいずれのexocytosis抑制剤の候補薬もAQP2の細胞膜上の発現量を抑制しなかった。また、VasopressinやFolskolinによるAQP2の刺激を抑制するかも検討したが、明らかな抑制効果はどの候補薬も認められなかったため、こちらの実験についてはこれ以上の検索は行わない予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AQP2とEGFRシグナルとの関わりについては、培養細胞系における検証に加えて、動物モデルを使った実験でも薬剤の効果が認められており、この点に関しては当初の予定以上の進展である。AQP2以外の電解質輸送体(NCC, NKCC, ENaCなど)との関わりについてはまだ検討は十分進んでおらず、これから検証をする予定である。検討が進んでいない理由として、NCCに対する効果の検討に関しては、マウスの遠位尿細管細胞であるmpkDCT細胞ではNCCの発現が弱く免疫染色にて細胞内の局在を評価することが難しいこと、transfection効率が悪いことなどが挙げられる。対策としてmpkDCT細胞以外の培養細胞を用いてNCCの安定発現株の樹立を検討している。また、AQP2のexocytosisの時に用いたssYFP安定発現細胞によるexocytosis assay系を樹立しようと試みたが、DCT細胞にssYFP plasmidの導入効率が悪いためか、安定発現細胞株が作れなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
EGFRシグナルとAQP2 の細胞膜へのtraffickingに関するメカニズムについてはまだ詳細は分かっておらず、既知のAQP2 trafficking のメカニズムを踏まえて検討する予定である。既知のVasopressin-PKA-AQP2のリン酸化signal pathwayとの関わりについて検討を行う。VasopressinはV2R受容体に結合し、細胞内cAMPを上昇させ、PKAを活性化させ、活性化PKAがAQP2をリン酸化することでAQP2の細胞膜側への輸送が行われることが知られている。EGFR阻害剤も同じ経路の刺激を行うのか、または別の独立したAQP2刺激経路があるのかを検討する。細胞内のcAMP濃度の測定、PKA活性の測定、AQP2リン酸化部位変異体を用いてEGFR阻害剤のAQP2のtraffickingに対する影響を考える。 EGFRシグナルとその他ナトリウム輸送体との関わりに関する検討に付いては、上記の達成度のところでも述べた通り、DCT細胞以外の培養細胞(HEK細胞)を用いてNCC安定発現細胞株の樹立を目指す。培養細胞上で、EGFR阻害剤やMEK阻害剤のNCCに対する効果が認められれば、動物モデルでも効果を検証する予定である。ただし、尿崩症モデルラットの実験においては、ケミカルスクリーニングで得られたAQP2 exocytosis亢進効果のあるAG-490を投与してもNCCの局在には明らかな違いは認められなかったため、尿崩症モデル以外のモデル(塩分負荷、塩分制限)で検証し直す必要があると考える。
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