2014 Fiscal Year Annual Research Report
成形修復用グラスアイオノマーセメントの表面強化用塗布材の開発と強化機構の解明
Project/Area Number |
26893072
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
塩沢 真穂 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (60735679)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | グラスアイオノマーセメント / 塩化カルシウム / ビッカース硬さ / EDS / FTIR / XPS |
Outline of Annual Research Achievements |
成形修復用グラスアイオノマーセメントは,硬化初期の機械的性質が十分でなく,長期耐久性が低いことが臨床で問題となっている.本研究は,成形修復用グラスアイオノマーセメントの硬化初期における機械的性質を改善するための表面強化用塗布材の開発と強化機構の解明を目的としたものである. アクリル製の窩洞に充填し硬化させたグラスアイオノマーセメント試料を,42.7 wt%塩化カルシウム溶液に浸漬し,浸漬時間が表面硬さに及ぼす影響を評価した.試料表面のビッカース硬さは,溶液浸漬時間が長くなるほど有意に増加した.溶液浸漬後の試料表面について,走査型電子顕微鏡を用いた観察およびエネルギー分散型X線分光器を用いた元素分析を行った結果,溶液中のカルシウムが選択的にグラスアイオノマーセメントのマトリックス表面に存在するのが確認された.試料表面のカルシウム濃度は,溶液浸漬時間が長くなるほど有意に増加した.溶液浸漬後の試料表面について,赤外分光分析およびX線光電子分光分析を行った結果,得られたピークはポリアクリル酸カルシウムのピークと近似しており,試料表面にポリアクリル酸カルシウムの存在が示唆された.これらのことから,塩化カルシウム溶液中のカルシウムイオンが,グラスアイオノマーセメントのマトリックス中に存在する未反応のカルボキシル基と結合したことが示唆された.そしてその結合により,グラスアイオノマーセメント試料表面のポリカルボン酸の構造体が強化され,表面硬さが増加したと推測された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究は,おおむね順調に進展している.本年度は,グラスアイオノマーセメントの表面強化用溶液の開発と,その特性および強化機構の解明を目的とし研究を行った.具体的には,塩化カルシウム溶液を用いてグラスアイオノマーセメントの処理を行い,ビッカース硬さ試験による強化深さの評価と,種々の分析方法を用いた試料表面の解析を中心に行った.次年度は,臨床に応用可能な実用形態の表面強化塗布材の開発と最適な処理時間の探索,および口腔内に存在するイオンとの複合作用の評価を行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,塩化カルシウム溶液によるグラスアイオノマーセメントの表面強化の確認と,表面強化機構の解析を中心に研究を行ってきた.次年度は,本年度に得られた知見をフィードバックし,臨床に応用可能な実用形態の表面強化塗布材の開発と最適な処理時間の探索,および口腔内に存在するイオンとの複合作用の評価を行う予定である. 月に一度,東京医科歯科大学先端材料評価学分野,生体材料加工学分野,部分床義歯補綴学分野に所属する研究協力者の合同ミーティングを行い,研究の進捗状況を確認し,ディスカッションを行う予定である.研究成果については随時学会発表,論文発表を行う.
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Research Products
(1 results)