2014 Fiscal Year Annual Research Report
大動脈瘤に対する間葉系幹細胞エクソソーム療法の試み
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26893110
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 英樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (50732707)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 大動脈瘤 / 間葉系幹細胞 / エクソソーム / 抗炎症作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景・目的】これまでに間葉系幹細胞が有する抗炎症作用・免疫抑制能を利用した細胞投与による大動脈瘤治療効果を明らかにしてきた。一方、近年では間葉系幹細胞が分泌する「エクソソーム」にも抗炎症作用や免疫抑制能を有しているとの報告があることから、本研究では、間葉系幹細胞から産生されるエクソソームを利用した、細胞を用いない、新たな大動脈瘤治療法の可能性を探る。 【実験】マウス大腿骨から骨髄を採取し、骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)を樹立した。80-90%コンフルエントの時点で血清不含培地に変えて48時間培養したのち、培養上清を回収して超遠心法にてエクソソームを分離した。得られたエクソソームは、フローサイトメトリーにて特異的表面抗原の同定、および透過型電子顕微鏡にて形態観察を行った。次に、活性化マクロファージまたは血管平滑筋細胞の培養培地にPKH26でラベルしたエクソソームを添加し、細胞内への取り込みの様子を顕微鏡で観察した。また、定量リアルタイムPCRにて各細胞の遺伝子発現変化について検討した。 【結果】約100nm前後のエクソソームの存在が観察され、特異的表面抗原CD9, CD81陽性が同定された。また、培養培地に添加したエクソソームは、活性化マクロファージおよび血管平滑筋細胞どちらにおいても12時間後で細胞内に取り込まれている様子が確認され、細胞形態に大きな変化は見られなかった。遺伝子発現では、活性化マクロファージにおいて、エクソソーム無添加群に比べてエクソソーム添加群でIL-1beta, TNF-alpha, MMP-2, MMP-9遺伝子発現が有意に低下した。一方、血管平滑筋細胞では、エクソソーム無添加群に比べてエクソソーム添加群でCystatin C, TIMP-2, MMP-2遺伝子発現が有意に上昇した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エクソソームの分離方法はいくつか論文報告があり、当初は市販抽出キットで試みていたが分離効率や純度が低かった。また、今後のアプリケーションを考慮すると、キットに含まれる未知試薬による影響を排除できないため、分離方法を超遠心法に変更した。この方法で分離・同定まで遂行することが可能となった。平成26年度では、エクソソーム取り込みに際する細胞への影響(形態や遺伝子発現変化)、エクソソーム内含有RNA,タンパクの網羅的解析を行う予定で、形態および遺伝子発現まで解析できたことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定では、平成26年度で遂行できなかったエクソソーム内含有RNA,タンパクの網羅的解析を行う。加えて、マウス大動脈瘤モデルを用いたエクソソーム静脈投与による大動脈瘤発症予防および治療検討を行い、その有用性を明らかにする。
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