2014 Fiscal Year Annual Research Report
歯根膜特異的分子PLAP-1によるFGF-2機能の制御機構解明
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26893146
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
粟田 敏仁 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (30733026)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 歯学 / 歯根膜 / ノックアウトマウス / PLAP-1 / FGF-2 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究においては、歯根膜に高頻度かつ特異的な発現を示す細胞外基質であるPLAP-1、および歯周組織の恒常性維持・創傷治癒過程で重要な働きを担うFGF-2との相互作用に関して、主に当研究室で樹立したPLAP-1 ノックアウト(PLAP-1-/-)マウス由来の胎仔線維芽細胞(MEFs)を用いて検討を行いました。まず、PLAP-1-/-マウス由来のMEFs(PLAP-1-/-MEFs)をサイトカイン(BMP-2、FGF-2)で刺激した際の細胞動態について、野生型マウス由来のMEFs(WT MEFs)と比較検討しました。その結果、PLAP-1-/-MEFsにおいては、BMP-2に対する反応性の亢進ならびにFGF-2に対する反応性の低下を認めました。このことから、PLAP-1がBMP-2の機能を抑制的に、一方、FGF-2の機能を促進的に制御している可能性が考えられたため、次にFLAG標識PLAP-1発現アデノウイルスを用いてPLAP-1-/- MEFsにPLAP-1を発現させることで、FGF-2誘導性細胞動態に与える影響について解析を行いました。その結果、PLAP-1発現群では対照群と比較して、FGF-2に対する反応性が亢進することが明らかとなりました。さらに、マウス歯根膜細胞株MPDL22においても内在性PLAP-1遺伝子の発現を抑制することで、FGF-2に対する反応性が低下することが明らかとなりました。以上の結果から、PLAP-1がFGF-2の機能を促進的に制御することが示されました。これまでにFGF-2を歯槽骨欠損部に局所投与することにより、歯周組織再生を促すことが明らかとなっており、今後、PLAP-1とFGF-2の相互作用について更なる解析を行うことで、歯周組織再生の分子基盤の解明や、さらには歯周病の新規治療法の開発の一助になることが期待されると考えています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究ではPLAP-1によるFGF-2の機能制御に関して、PLAP-1-/-MEFsの分離・培養に成功し、サイトカイン刺激を行った際の細胞動態をWT MEFsと比較検討しました。また、当研究室で作製したFLAG標識PLAP-1発現アデノウイルスおよび対照群としてLacZ発現アデノウイルスをPLAP-1-/-MEFsに感染させ、PLAP-1を発現させた際のPLAP-1-/-MEFsのFGF-2誘導性細胞動態を対照群と比較検討しました。さらに、歯根膜細胞においてもMEFsと同様にPLAP-1によるFGF-2の機能制御について検討するため、MPDL22を用いてsiRNAにより内在性PLAP-1遺伝子の発現を抑制した際のFGF-2誘導性細胞動態を対照群と比較検討しました。以上の実験の結果、MEFs、MPDL22においては、PLAP-1遺伝子の発現消失あるいは発現低下により、FGF-2に対する反応性が低下すること、また、PLAP-1-/-MEFsにPLAP-1を発現させることで、FGF-2に対する反応性が亢進することが明らかとなりました。今年度の研究計画は、まずMEFsおよびMPDL22を用いてPLAP-1とFGF-2との相互作用を明らかにすることであったため、当初の研究目的に対しておおむね順調に進展していると考えています。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は昨年度の研究結果を踏まえ、PLAP-1によるFGF-2の機能制御のメカニズムについて、分子レベルでの詳細な解析を予定しています。まず、PLAP-1の属するSmall leucine rich repeat proteoglycan familyは様々なサイトカインと直接結合することが報告されています。そこで、PLAP-1とFGF-2の各Recombinantタンパクを用いた免疫共沈解析を行い、分子間の直接的な結合能の有無を検討します。また、細胞外におけるPLAP-1、FGF-2およびFGFRとの相互作用を想定し、3種のRecombinantタンパクを用いた免疫共沈解析も行う予定です。もしこれらの免疫共沈解析がうまく機能しない場合は、ELISA法によるタンパク同士の結合能の解析を予定しています。さらに、in vivoにおけるPLAP-1とFGF-2の相互作用の検討も行います。マウスの臼歯に絹糸を結紮することで一旦歯周炎を引き起こし、同部に外来性にFGF-2を局所投与することで、FGF-2により誘導される歯周組織再生効果をWTおよびPLAP-1-/-マウスにおいて比較検討する予定です。解析方法は、マイクロCTを用いた支持歯槽骨の三次元解析のほか、組織切片を作製し、ヘマトキシリン・エオシン染色による歯周組織の構造解析、また特異抗体を用いた免疫組織化学によるタンパク発現解析を行い、FGF-2投与による歯周組織の再生過程を解析、比較します。さらに、レーザーマイクロダイセクション法を用いて、歯周組織の特定の部位からmRNAを採取し、RT-PCR解析を行うことで、微細環境で生じている現象についても比較検討を行う予定です。
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Research Products
(1 results)