2014 Fiscal Year Annual Research Report
ペルオキシソーム酵素の新規変異によるミトコンドリア異常を介した神経細胞死の機構
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26893162
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松田 由喜子 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 特任助教 (10735301)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | ペルオキシソーム / 脊髄小脳変性症 / 脂肪酸代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、エクソーム解析から劣性の脊髄小脳変性症(SCD)において、ペルオキシソームβ酸化酵素(DBP)をコードする遺伝子(HSD17B4)を新規原因遺伝子として同定した。HSD17B4変異がどのような分子機構でSCDを引き起こすのか、明らかにすることが本研究の目的である。 DBP欠損症では、極長鎖脂肪酸(VLCFA)の蓄積がスクリーニングに用いられ、酵素活性の欠失の指標としているが、本家系ではVLCFAの蓄積は認められていなかった。また、患者由来線維芽細胞を用いた予備実験から、ミトコンドリア形態異常を示唆する所見が得られていた。本研究は、ペルオキシソーム機能不全がミトコンドリアなどと関連しながら、最終的に神経細胞変性死に至る新たなSCD発症経路を明らかにし、治療法の開発に貢献することを目指す。 当該年度において、神経変性疾患における変異DBP分子の作用機序を明らかにするため、HSD17B4変異を持つ患者由来線維芽細胞を用いて、DBP分子の発現分布を調べた。N末フラグメント、C末フラグメント各々に対する特異的抗体を用いて、細胞染色により細胞内の局在および生化学的な解析を行ったところ、細胞内の分布は健常者の線維芽細胞と違いが認められなかったが、蛋白質切断量に差が検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究対象のSCD新規原因遺伝子であるHSD17B4変異により、HSD17B4遺伝子がコードするDBP分子の機能的多量体の生成量低下を示唆するデータが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の結果のさらなる解析を行うとともに、患者由来線維芽細胞における変異DBP分子のβ酸化活性の低下が起こっているのか培養液中の基質量を脂肪酸分析等を用いて調べる、また、患者線維芽細胞由来iPS細胞を作成し、小脳神経細胞に分化誘導させ、HSD17B4変異が機能的なDBP分子の発現量を低下させ、細胞死を引き起こすのか検討する。さらに、神経細胞死が起こり始めるよりも早い時期に中鎖脂肪酸を培養液に加えて、ミトコンドリアにエネルギー基質を供給することにより、細胞死を抑制することができるか検討する。
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