2014 Fiscal Year Annual Research Report
新たなp53の機能であるタンパク質合成の制御機構の解明と新規抗癌ターゲットの発見
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26893181
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
難波 卓司 高知大学, 教育研究部総合科学系, 特任助教 (10729859)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | p53 / 小胞体 / 小胞ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
小胞体の機能亢進は癌細胞の悪性化を誘発し、転移や薬剤耐性の獲得に関与していることも報告されている。しかし、癌細胞特異的な小胞体の機能を亢進させる機構については明らかになっていない。 そこでまず癌特異的な癌抑制遺伝子の機能喪失に注目して小胞体の機能を調べたところ、p53が癌細胞における小胞体の機能制御に重要な役割を果たしていることを見出した。野生型p53癌細胞と変異型p53癌細胞において小胞体ストレス応答に関与している種々の蛋白質の発現を比較したところ、IRE1と活性型XBP1の発現が変異型p53癌細胞で顕著に増加していた。また、変異型p53癌細胞では蛋白質の分泌が促進され、小胞体ストレスによる細胞死も抑制されていることを発見した。次にp53の機能喪失による小胞体機能の変化がIRE1の発現増加に依存しているかをIRE1阻害剤によりIRE1からのシグナル伝達を抑制することで調べた。IRE1阻害剤の処理により、変異型p53細胞で増加していた活性型XBP1の発現、蛋白質の分泌、及び小胞体ストレスによる細胞死への耐性化のすべてが抑制された。一方で変異型p53細胞ではIRE1のプロテアソームによる分解が抑制されIRE1蛋白質の安定性が増加することも見出した。さらにp53はE3ユビキチンリガーゼであるSynoviolin 1とIRE1の結合を促進していることも突き止めた。以上の結果からp53機能喪失によりIRE1の分解が抑制されることでその発現が増加し、IRE1/XBP1経路が活性化すること、及びこの経路の活性化がp53機能喪失による小胞体の機能亢進を誘導していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、p53変異癌細胞でIRE1の発現が増加していること、またその機構としてSynoviolin 1が関与していることを解明した。このIRE1の発現増加により、p53変異癌細胞で小胞体の機能が亢進していることを明らかにすることができた。以上、本年度は計画通り目標であるp53の小胞体機能の制御機構の解明を達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
<p53によるATF6経路とPERK経路の活性化に与える影響> p53野生型細胞とp53変異細胞において、ATF6経路とPERK経路の小胞体ストレスによる活性化に違いがあるかを調べる。ATF6経路については、小胞体ストレスにより切断され産生される活性型ATF6の発現をイムノブロット法で調べる。PERK経路については、PERKのリン酸化とその下流の因子であるeIF2αのリン酸化を調べる。 <IRE1阻害剤がp53変異癌選択的に毒性を示すのか> 変異型p53癌細胞は悪性度の高い表現型を示し、特に核酸合成を阻害するような抗癌剤に対して耐性を示すことが知られている。そこでIRE1阻害剤はp53変異癌に選択的に高い毒性を示す新たな抗癌剤として有望ではないかと考え、p53変異癌細胞を移植するマウス癌移植モデルを用いて検討を行う。
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