2014 Fiscal Year Annual Research Report
DNase1L3の自己DNA処理機構の解明とSLEの病態形成への役割の検討
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26893188
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三苫 弘喜 九州大学, 大学病院, 助教 (60467909)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | DNase / 全身性エリテマトーデス / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
DNase1L3には2つのisoformが存在し、双方を検出するreal-time PCR primersを設計した。ヒト末梢血球細胞をcell sortingによって各分画に分離し、同primersを用いてDNase1L3 mRNAの発現解析を行ったところ、どの細胞分画も同程度の発現が認められた。また無刺激の状態では蛋白は細胞質に分布しており、核内には認めなかった。上皮系細胞においてDNase1L3はアポトーシスの核DNA断片化に関わっていることが報告されているが、ヒトリンパ球ではアポトーシス誘導前後で発現量の変化は認めず、アポトーシス誘導後も核への蛋白の移行を認めなかった。従って、上皮系細胞と血球細胞ではDNase1L3の機能が異なっていると推測された。また、myeloid系の細胞でtoll-like receptors刺激前後の発現量を比較検討したところ、増減は認めなかった。一方で一部のサイトカイン刺激では発現が10倍以上に増加した。DNase1L3の発現をほとんど認めないHEK293T細胞にDNase1L3を強制発現したところ、DNase1L3が培養上清中で検出され、さらに培養上清はプラスミドDNAに対してDNase活性を示した。このことよりDNase1L3が細胞外へ分泌され、細胞外でもDNase活性をもつことが明らかとなった。さらなる機能解析を行うためDNase1L3のC末端にTagを付加し、強制発現したHEK293T細胞よりDNase1L3蛋白を精製した。DNase1L3はDNase1と同様にCa, Mgイオン存在下により高いDNase活性を示した。さらにDNase1とは異なり、naked DNAのみならず、nucleosomal DNA等の蛋白が結合したDNAに対しても切断活性を持っていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究活動をスタートするにあたり、全体的には実験系を予定通り立ち上げることが出来た。事前のcDNA arrayのdataではDNase1L3の発現は樹状細胞やマクロファージに強く認められたが、今回isoformをすべて増幅するprimersを設計することにより、他の血球細胞分画でも発現していることがreal-time PCR法で判明した。従ってより多くの細胞において本蛋白が機能している可能性が出てきた。蛋白発現を解析するための抗DNase1L3ポリクローナル抗体が免疫動物の個体差により以前のように機能しなくなったために、タンパク質関連の実験が遅れていた。その後異なる免疫ペプチドを用いた新たな抗体をえることが出来たため、現在は解析が進んでいる。発現細胞の解析、細胞内での蛋白の分布、発現調節について実験がすすんでおり、予定通りの検討が行えたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
DNase1L3を内因的に発現しているTHP-1 macrophagesに、short hairpin(sh)RNAまたはCRISPR/CAS9システムを用いてDNase1L3の発現を安定的に抑制した細胞株を樹立する。この細胞株に細胞死を誘導する種々の刺激を加えた後、またはアポトーシス細胞を貪食させた後に、DNAの消化がknockdown細胞で障害されているかについて検討する。また細胞外に放出されたDNase1L3がどのようなDNAを消化するのかをDNase1と比較検討する。これらの結果に基づき、全身性エリテマトーデス患者でDNase1L3の量的または機能的異常があるか否かを樹状細胞やマクロファージあるいは血清を用いて、健常人や疾患コントロールと比較する。さらに、DNase1L3によって処理されなかった自己DNAが形質細胞様樹状細胞のTLR9を刺激してtype 1 IFNの産生を誘導するか、あるいは抗原提示細胞から自己抗原としてT細胞に抗原提示されるか、あるいはmyeloid系細胞の細胞質内DNA sensorを介してtype 1 IFNを誘導するか、について解析を行う。これらの実験から、DNase1L3の全身性エリテマトーデスの病態形成における役割について明らかにする。
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