2014 Fiscal Year Annual Research Report
治療抵抗性肝細胞癌おけるマイクロRNAの機能解析と新規治療への展開
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26893191
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 心二 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90382423)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | マイクロRNA / 肝細胞癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞癌に対する肝切除術は代表的な根治的治療の一つであるが、肝機能不良により肝切除不能となることも多い。切除不能症例に対して局所療法、塞栓療法の有効性が確立しているが、治療後の局所再発が問題となり、治療に抵抗性を示すことも少なくない。今回我々は治療抵抗性肝細胞癌におけるマイクロRNA(miRNA)の発現異常の分子生物学的解析と新しい治療法への応用を目的とした。具体的には、(1)低酸素状態・スフェロイド形成下(三次元培養)での肝細胞癌におけるmiRNA発現異常、(2)肝細胞癌の悪性化獲得におけるmiRNAの役割、(3)miRNAによる肝細胞癌の革新的治療の開発について詳細な検討を行う。 肝細胞癌細胞株を用いた三次元培養によるスフェロイド形成の手技を確立し、低酸素条件による経時的な低酸素誘導因子、血管内皮細胞増殖因子のmRNA発現のプロファイルを行った。各条件下で抽出したRNAを用いたマイクロアレイを行いmiRNA発現の解析を行っている。また、miRNAの一つに着目し、その標的遺伝子の一つである受容体型チロシンキナーゼの発現を検討したところ、癌部にて非癌部と比較してmRNAおよびタンパク質発現の上昇を認めた。臨床病理学的因子との比較において肝細胞癌の増殖・浸潤に深く関連することが明らかとなった。さらに高発現症例は生存率が有意に不良であり、多変量解析にて肝細胞癌に対する肝切除術後の予後因子の一つであった。我々の解析により肝細胞癌の生物学的悪性度に極めて重要なkey factorを同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
治療抵抗モデルとして三次元培養によるスフェロイド形成モデルの作成は時極めて重要である。肝細胞癌細胞株を用いた三次元培養によるスフェロイド形成の手技を確立した。さらに低酸素条件による経時的な低酸素誘導因子、血管内皮細胞増殖因子のmRNA発現のプロファイルを行った。miRNAアレイの網羅的解析およびターゲットを絞った解析を行い、標的遺伝子の肝細胞癌における生物学的悪性度への関与を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
動物モデルを用いたアンチセンスRNA導入法の検討および治療効果判定を行う。8週齢のマウス右背部皮下に2.5x106個のマウス肝癌細胞株を播種したマウス皮下肝癌モデルを作成する。アンチセンスRNAの導入法を検討し導入効率を定量する。miRNA抑制による肝癌の新規分子標的治療の開発を行うために、ターゲットmiRNAに対するアンチセンスRNAを導入し個体レベルでの抗腫瘍効果を検討する。
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