2014 Fiscal Year Annual Research Report
急性肝不全に対するファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬の保護効果の検討
Project/Area Number |
26893193
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
白水 和宏 九州大学, 大学病院, 助教 (30568960)
|
Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
Keywords | ファルネシル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ファルネシル化が生体内において様々な役割を担っていることが明らかにされているが、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬であるtipifarnibは抗癌剤として臨床試験を試みられている一方で、スタチンとともにマウス敗血症モデルで保護作用を有することが報告されている。本研究の結果は、激しい炎症反応を肝臓に限局して生じる急性肝不全・劇症肝炎に対してtipifarnibが肝保護作用を発揮することを示すものである。現段階までの結果を報告する。 野生型マウスに対して、GalN/LPSを投与した急性肝不全モデルを作成した(GalN/LPS群)。一方でGalN/LPS投与一時間後にファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬であるtipifarnibを投与した治療群((GalN/LPS)+ Tipi群)を作成し、GalN/LPS群と以下の比較を行った。①血液生化学検査(肝逸脱酵素測定)、②肝臓の組織学的評価(浮腫、炎症細胞浸潤、壊死細胞)、③炎症性サイトカインの発現(定量的PCR、ELISA)、④炎症性、抗アポトーシス蛋白、転写酵素、転写因子蛋白の定量(ELIZA、Western blot)⑤活性型Caspaseの検出(Western blot、Caspase活性測定)、⑥ファルネシル化蛋白定量、⑦生存率。結果はtipifarnibが著効し、GalN/LPSによって引き起こされるアポトーシス、炎症反応を抑え、生存率を改善させた。さらに肝臓組織での免疫染色によりファルネシル蛋白の発現が抑えられたのを確認した。 現段階ではその作用メカニズムを生体および分子レベルまでの解明までは至っていない。今後の課題である。しかしながら肝不全にファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬が著効したことは臨床的にも意義があると思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではCaspase3ノックアウトマウスを用いての実験も26年度に組み込んでいたが、そこまでは至らなかった。ラボの移動も影響したと思われるが、おおむね順調に経過している。
|
Strategy for Future Research Activity |
GalN/LPSモデルでの肝障害はアポトーシスがその主な病態と考えられている為にCaspase3ノックアウトマウスを用いてtipifarnibの効果を検討する。Caspaseに対する効果、アポトーシス経路に影響を及ぼすと考えられる転写因子、転写酵素及び抗アポトーシス蛋白、またファルネシル化蛋白の定量を行う。
|
Research Products
(1 results)