2014 Fiscal Year Annual Research Report
食道癌におけるWarburg effect関連遺伝子と抗癌剤耐性に関する検討
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26893203
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
澤山 浩 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (40594875)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | Warburg effect / Glut1 / 抗癌剤耐性 / FDG-PET / 術前化学療法 / 抗癌剤治療効果 / 食道扁平上皮癌 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
食道扁平上皮癌では、早期よりリンパ節転移を伴い、化学療法、放射線療法、手術療法の併用による集学的治療が生命予後の改善に寄与している。術前化学療法の有用性も報告されたが、なかには抗癌剤がほとんど奏効しない症例もあり、抗癌剤耐性に関連するバイオマーカーの検索、およびその作用機序の解明が課題である。抗癌剤耐性に関与する遺伝子の報告は少なく、不明な点が多い。本研究では、Warburg effect 関連遺伝子の中で、抗癌剤耐性に関与する因子を検索し治療への応用を検討することを目的とした。 まず、食道扁平上皮癌におけるGlut1の発現とFDG-PET SUVmaxの関係を調べた。N=86において、Glut1の発現とFDG-PET SUVmaxが相関することを示した。Glut1は腫瘍深達度と関係していた。腫瘍深達度が進行するほど腫瘍は低酸素状態となりHIF1Aが活性化すると報告されているが、HIF1Aの下流でGlut1の発現が上昇することが示唆された。FDG-PET SUV maxも腫瘍深達度と強い関係を示しており、HIF1AやMycなどの下流として、Glut1発現上昇を反映している可能性が示された。リンパ節転移を有する症例に対して、化学療法前、化学療法後にFDG-PET を施行した122 例の患者を対象として、化学療法前の生検サンプルのGlut1 の発現を評価した。結果、Glut1 の発現が高い症例ではSUVmax 減少率が有意に低かった。これらの検討により、Glut1はFDG-PET SUVmaxと相関があるばかりではなく、特にGlut1発現高値の症例は、抗癌剤耐性を有する可能性が示された。そこで、我々は、Glut1の過剰発現ベクターを作成し、食道扁平上皮癌(TE4)においてGlut1の過剰発現細胞株を作成した。過剰発現ベクターにGFPを付加することでその蛋白発現の局在が細胞壁であることを確認した。これらの研究によって、SiRNAおよび作成したGlut1の過剰発現細胞株を用いてWarburg effectと抗癌剤耐性との関係を示すための今後の研究に繋がると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
確立した実験系の下に臨床解析が行われ、信頼のできるデータが蓄積されている。特に免疫染色およびFDG-PETから得られる知見は今後の基礎研究において重要な意義を持つと考えらえる。In vitro, In vivoにおける細胞株の樹立、確実な結果の確認が必要である。研究の根拠となる論文の報告、研究内容に関して学会にて発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、抗癌剤耐性に関してWarburg effectが関連する可能性が示唆された。特に臨床データに基づくと、Warburg effectにおけるGlucose transporterにおいて、Glut1が重要な役割を果たしている可能性を示してきた。食道扁平上皮癌において、食道癌細胞株を用いて臨床データに関する検証を行う予定である。抗癌剤耐性細胞株の作成、抗癌剤投与後のWarburg effect関連の発現変化の評価、flex analyzerを用いた代謝経路の変化を解析する。臨床データにおいて特に重要性が示唆されているGlut1を中心として、siRNAを用いて抗癌剤感受性が変化することを細胞レベルにて確認する。さらに、他のWarburg effect関連遺伝子の発現変化をReal time PCRで調べると共に、グルコース消費量、乳酸産生に関して評価する。これらの研究により、Warburg effect関連遺伝子の臨床的意義をより深く解明することが可能となり、食道扁平上皮癌の新しい治療に繋がると考える。 現在、研究は概ね順調に進んでおり、問題点となるような事柄は特にないと考える。
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Research Products
(3 results)