2014 Fiscal Year Annual Research Report
新規遺伝学的手法による肺炎球菌の血清型および薬剤耐性の分子疫学的解析
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26893212
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
川口谷 充代 札幌医科大学, 医学部, 助教 (70733062)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 肺炎球菌 / 血清型 / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦において、小児に対する7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)が2010年2月に任意接種として導入された後、2013年4月に定期接種化され、同年11月には13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)に切り替えられた。本研究ではPCV7/PCV13の定期接種期間 (2013年4月-2014年11月)に、札幌臨床検査センターにおいて、北海道各地の医療機関から収集された外来患者由来の非侵襲性肺炎球菌臨床分離株2057株を研究対象とし、PCV7任意接種期間 (2011年) のデータを比較解析に加え、PCV7任意接種/定期接種およびPCV13定期接種導入による、肺炎球菌莢膜血清型の変化を小児・成人別に評価した。 本研究では、まず連続多重PCR法による肺炎球菌血清型の判別をさらに改良し、より簡便に多くの血清型同定を可能とする新規血清型鑑別法を考案した。2014年、日本において初めて、連続多重PCR法とmutagenic PCR-RFLP法を用いた血清型の判別で、PCV7任意接種期間における血清型の分布状況を調査し報告した(Kawaguchiya et al., Microb. Drug Resist. 2014, 20:456-465.)。本研究では、これらワクチンの定期接種化に伴い、高頻度に分布していると予想される血清型をより早い段階で判別できるように改良を加え、全2057菌株のうち2053株 (99.8%) の血清型をさらに簡便に同定することができた。 研究結果として、小児における血清型の分布状況には顕著な変化が見られた。PCV13導入後は、PCV7任意接種期間 (2011年) のデータと比べてPCV7含有血清型が48.3%から3.3%に減少し、非PCV13血清型が75%を占めていた。成人由来株においても、緩やかなPCV7含有血清型の減少と、非PCV13血清型の増加が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、PCV7定期接種期間に分離された1097株 (小児由来975株、成人由来122株)およびPCV13定期接種期間に分離された960株 (小児由来873株、成人由来87株)、全2057菌株のうち99.8%の血清型を判別した。加えて血清型6亜型(6A/6B/6C/6D)から6Eを検出する為の新規血清型鑑別法を開発し報告を行った(Kawaguchiya et al., High prevalence of genotype 6E (putative“serotype 6E”) among non-invasive / colonization isolates of Streptococcus pneumoniae in northern Japan. Microb. Drug Resist. 2015, 21:209-214) 。進行状況は良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた結果から、PCV13に含まれる血清型および著しい増加が見られる非ワクチン含有血清型を更なる解析対象として約300株を選出し、MICの測定による薬剤感受性試験を行う。薬剤感受性試験には微量液体希釈法を用い、ドライプレート(栄研)を利用し、18種類の抗菌薬 (PenicillinG、Ampicillin、Cefazolin、Cefmetazole、Flomoxef、Imipenem、Gentamicin、Arbekacin、Minocycline、Erythromycin、Clindamycin、Vancomycin、Teicoplanin、Linezolid、Fosfomycin、Levofloxacin、Cefoxitin、Sulfamethoxazole-Trimethoprim)に対する薬剤感受性を測定する。各血清型における各薬剤感受性評価結果を小児・成人別にSPSSで解析し、それぞれの薬剤と血清型における特徴を明らかにする。薬剤耐性遺伝子の検出に関しては、マクロライド耐性遺伝子(ermB, mefA/E)の検出に加えて、薬剤感受性試験の結果から、重要であると想定される薬剤に関する薬剤耐性遺伝子の検出を行う。さらに、PCV7/13導入後に増加が見られる血清型、顕著な薬剤耐性を示した菌株、薬剤耐性遺伝子の保有を示す代表的な菌株に対し、Multilocus Sequence Typing (MLST) 解析を行う。
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Research Products
(4 results)